2008年にスタートした「ふるさと納税」は、“納税”と銘打たれているものの、厳密にいえば寄付金制度だ。また、“ふるさと”と言えど、出生地に関わらずどの自治体にも自由に寄付することが可能。さらに、寄付額に応じて住民税などの控除が受けられるといったメリットもあり、「ふるさと納税」が急速に普及していることは周知の通りである。
しかし、「ふるさと納税」の人気を集めるほど税収が増えることから、一部の自治体の間ではなかば“返礼品競争”のような様相を呈し、問題となっている。たとえば、静岡県小山町は返礼品として、寄付額の4割にも当たるAmazonジャパンのギフト券を設定。申し込みが殺到し、平成30年の受入額は約249億円に達したという。
しかし、小山町の行き過ぎた「ふるさと納税」制度には批判も噴出した。1月11日には、石田真敏総務相が「法制度のすきまをとらまえた行動であり、およそ良識があると思えない」と発言するに至っている。小山町はこれまでも、総務省から“節度ある対応”を求められていたという。
ふるさと納税の広がりによって、割を食う自治体も増えている。たとえば東京都の町田市は、2017年度の「ふるさと納税」の影響で約4億円の税収赤字だった。要するに、町田市民が積極的に「ふるさと納税」を行ったことで、多くの税金が控除されたのに対して、町田市への寄付額が伸びなかったことにより、差し引き約4億円ものマイナスになってしまったのだ。「ふるさと納税」制度による税収減にあえぐのは、目立った特産品のない都市部の自治体に多いようだ。
こうした状況に対して、都市部の自治体のなかには怒りの声を上げているところもある。はたして「ふるさと納税」は、必要以上に地方優遇な、問題の多い制度なのだろうか。「ふるさと納税」に詳しい、経済ジャーナリストの磯山友幸氏に話を伺った。
「ふるさと納税」自体は、各自治体の努力が報われる重要な制度
そもそもは、生まれ育ったふるさとへ恩返しをするための方法として作られたという「ふるさと納税」制度。やはり地方自治体にとっては、恩恵が多いものなのだろうか。
「それまで地方の税制は、努力をしても報われない仕組みになっていました。地方自治体の財源不足を補うために、総務省が分配を決めて配分する『地方交付税交付金』というものがあるのですが、この資金に依存している自治体が非常に多かったのです。もともと『地方交付税交付金』は自治体ごとの格差をなくすために、赤字分を補填するという目的の資金だったため、頑張って税収を増やすと、むしろ『地方交付税交付金』は減らされてしまうのです。
そこに『ふるさと納税』という制度が登場したことで、自治体としては、努力をすればその分税金が増えるという道ができたといえるでしょう。ですから、努力をしていろいろ工夫を凝らしている自治体は、大きな恩恵を受けられるという仕組みになったわけです」(磯山氏、以下同)