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東京都立町田総合高校の男性教員が1年生の男子生徒に暴行を加え、ケガを負わせた事件が波紋を広げている。暴行の一部始終を撮影した動画が生徒の手によってTwitterに投稿、拡散されて問題となると、男性教員は暴力を認めて謝罪。東京都教育委員会は、男性教員の処分を検討している。
しかし動画のなかには、生徒が「ツイッターで炎上させようぜ」と話す声が残されており、男性教員を挑発するような態度であることからも、男性教員が生徒たちにハメられたという可能性が浮上。世論は一変し、男性教員を擁護する向きが広まっている。
連日のワイドショーでも、「暴力はいけないこと」と前提したうえで、やはり男性教員に同情的な意見が多かった。21日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)では、加藤浩次が「僕は思うんだけど、やっぱり生徒も裁かれるべきでしょ。生徒は先生をハメられるんだもん」と私見を述べた。
さらに、22日放送の『バイキング』(フジテレビ系)でも、ヒロミが「率直に気分の悪い動画だとは思う」と感想を述べ、「会話を聞いていたらどっちが先生だか生徒だか分からない」「このガキども連れて来たらシメたい。全員まとめて。本当に大人をナメているというか、生徒としての資格がないよね。学校の教師の資格がないという人もいると思うけど、こいつらに生徒としての資格はない」と怒りを露わにした。
これら著名人のコメントに対しては、視聴者からも「よくぞ言ってくれた」と肯定的な声が多く寄せられている。これは由々しき事態ではないだろうか。
「生徒が教師をハメた」という内容にのみ注目するのは論点のすり替え
2018年2月に発表された公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンの調査によると、しつけのために子どもに体罰することについて、「積極的にすべき」(1.2%)、「必要に応じてすべき」(16.3%)、「他に手段がないと思ったときのみすべき」(39.3%)と答えており、6割近くが体罰を容認している。
ましてや今回の件に関しては、もしも生徒たちに教師を陥れようという意図があったとするならば、男性教員と生徒たちのいったいどちらが被害者なのか、モヤモヤする人も多かったことだろう。体罰を、場合によっては「必要悪」「仕方のないこと」と捉える人はそもそも多いようだ。
しかし、本当にそうだろうか?「暴力」はいけない――これは、誰もが納得することだろう。今回、男性教員の取った行動は、学校外の出来事であればただちに暴行罪か傷害罪が適用されるはずだ。それを、学校内というシチュエーションや、教師と生徒という関係性にのみ「体罰」と言い換えることは、果たして正しいのだろうか。
生徒たちにハメる意図があったかどうかは別として、動画が残っている以上、男性教員が生徒に手を上げたことは事実だ。多くのメディアは「生徒が教師をハメた」という衝撃的な内容にのみ注目し、論点をすり替えてしまってはいないだろうか。
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