大坂なおみを白人にした日清CM~ブラックフェイス  vs. ホワイトウォッシュ

文=堂本かおる

社会 2019.01.24 15:05

ホワイトウォッシュ

 今回の日清のCMは「大坂選手をホワイトウォッシュした」と言われている。実のところ、ホワイトウォッシュには2種類ある。

・映画で顕著な、本来は黒人の役を白人が演じること
・黒人の肌の色を明るく修正するなどし、黒人性を薄めること

 黒人だけでなく、すべてのマイノリティに対して同様のことが行われているが、黒人の場合、白人との肌の色の対比が特に際立つ。

 ホワイトウォッシュが起こる理由も複雑だ。まず、映画に関してはマイノリティ俳優より白人俳優のほうが興行成績が上がるだろうという、映画会社の時代遅れな考えに基づくものと思われる。

 昔、アメリカは白人の人口比率、収入がマイノリティに比べて格段に高かった。したがってビジネスの視点からは白人俳優の起用に一応の根拠があったと言える。だが、今は白人の比率は6割まで下がり、マイノリティの年収も昔に比べると上がっている。マイノリティは消費者としてないがしろに出来ないだけでなく、作り手側にも存在する時代になっている。だからこそ昨年は黒人映画『ブラックパンサー』、アジア系の映画『クレイジー・リッチ(エイジアンズ)』が大ヒットした。

 黒人を白人風に描写するホワイトウォッシュについても、似た理由がある。先に書いた理由により、近年は映画やテレビに黒人も「出演させなければ批判される」時代となった。だが、あまりに黒人色を強くすると白人視聴者が離れていくだろうという恐れが作り手側にある。そもそもビジネス以前の問題として黒人への生理的な嫌悪感、忌避感がある。次の章の「テスト」がそれを物語っている。

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ウェジー 2017.02.23

「黒い肌でいたくない」

  1940年代に行われた、肌の色についての有名な実験がある。子供に白人の人形と黒人の人形を見せ、どちらが「良い」か、選ばせるのだ。CNNは2010年にこの実験を再現している。白から濃茶まで肌の色の異なる5人の子供のイラストを子供たちに見せ、「どの子が一番可愛い?」「醜い?」「賢そう?」「賢くなさそう?」などと質問する。

 「どの肌の色になりたい?」に対して、幼い女の子は薄い肌のイラストを指す。理由を聞かれると、「自分の茶色い肌が好きじゃないから」と答えている。「大人はどの肌の色が好きじゃないと思う?」に対しては、濃茶を指している。幼児期にすでに「大人は自分の茶色い肌を疎む」と思い込まされているのだ。

 別の女児は「どれがあなたと同じ色?」と訊かれ、自分の腕とイラストを見比べた上で、自分より一段階薄い色を指している。悲しい現実逃避と願望の表れだ。「なりたい色」はベージュ、「なりたくない色」は濃茶を指す。黒人にとって肌の色が、どれほど深刻な問題であるかがよく分かる。

 この現象を変えるために、黒人の子供に肌の色のバラエティを教える絵本が多数出ている。「黒人、白人、ラティーノ、アジア系……いろんな肌の色があるね」だけでなく、「黒人の中にもチョコレート、ハニー、ナッツ、ミルク……いろんな肌の色があるね」というものがある。どちらも「どの色もそれぞれに素敵」だから、「自分の色を大好きになろう」がメッセージだ。

 さらに近年は黒人の親たちが、黒人の子供の写真をプライドと共にアップする専用のSNSアカウントも増えている。それぞれ異なる子供の肌の色にマッチした人形をカスタムオーダーできるサービスも始まっている。こうした努力もあり、実験のビデオには「肌の色は問題じゃない」と、はっきりと答える子供も登場する。

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