大坂なおみを白人にした日清CM~ブラックフェイス  vs. ホワイトウォッシュ

文=堂本かおる

社会 2019.01.24 15:05

「ブラック・ガール」

 筆者による日清CMとタイム誌のツイートに対し、(日清が大坂選手の肌を白くしたのは)「企業利益のため」「アニメ文法」「テニプリの世界観を知らないのか」「黒人の特徴を誇張すると批判される」「こんな対比をすること自体が差別的」といった趣旨のリプライが寄せられた。アメリカにおける黒人の描写問題を説明すると、「ここは日本だ」と言う返答があった。

 上記の意見は全て視野狭窄だ。それぞれ日清という一企業、アニメ界、日本国内を唯一の世界と捉えている。そうした「世界」は昔のものであって、今は日本も変化の渦中にある。

 そもそも企業利益を得るにしても、これからは増え続ける肌の色の異なる人々を顧客として獲得する必要がある。アニメ・ファンや描き手にも、そうした人たちは増えていくことだろう。さらに、今はSNSによって全ての情報が瞬時に世界に広がる時代だ。「ここは日本だ」では済まないのは、黒塗り問題や伊藤詩織氏の#MeToo問題がすでに証明している。

 だが、最も重要なのは、肌の色が異なる子供たちの心情だ。筆者のツイートに対し、日本で黒人とのミックスの子供を育てている人たちから、以下の書き込みがあった。

「涙出た。もし私の息子がこう描かれたら、ホンマに悲しい」

「(子供の小学生時代に)クラスメイトが描いた絵の中のうちの子の肌の色が、そのまま茶色で描かれていたのを見て、ものすごくものすごく嬉しかった/ありのままを受け入れて貰ってるんだなって」

 大坂選手が表紙のタイム誌に、大坂選手についての長文記事がある。その中に、沖縄で小学一年生を教えている教師へのインタビューがある。自身も日本人とナイジェリア人のミックスであるハーモニー・エグベさんは、「自分と似た風貌の大坂選手が日本を代表しているのをテレビで観るのは、ミックスである子供たちにとっても、私自身にとっても、とても重要なのです」

 同じ記事で大坂選手は、複数あるアイデンティティのどれが自分にとって最も強固なのか分からないと語っている。「日本人、ハイチ人、アメリカ人がそれぞれどんな風に感じるものなのか、本当に分からない」「私はただ私だと感じる」。だが、別のインタビュー記事では、自身をはっきりと「ブラック・ガール」と呼んでいる。これを理解するには、文化的エスニック・アイデンティティと人種(肌の色)は異なるものだと知る必要がある。

 日本に暮らす肌の色が「従来の日本人」と異なる人たちが、中でも子供たちが、今後も日清CMのように白人化された黒人像を見続けなければならないとしたら、その先にあるのはアメリカでの肌の色の実験の結果だ。どの子の、どんな肌の色も美しくて可愛い。プライドにこそすれ、間違っても引け目に感じるものではない。私たち大人が子供たちに伝えなければならないメッセージは、これなのだ。

(堂本かおる)

追記:1/22付ニューヨーク・タイムズにこの件を報じる記事が掲載され、日清側が謝罪したとある。
Backlash Over Ad Depicting Naomi Osaka With Light Skin Prompts Apology

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