宮藤官九郎は一貫してのんを支持し続けてきた
しかし、希望はある。芸能界において、のんに対して激しい逆風が吹き荒れているなか、宮藤だけは一貫してのんへの支持を表明し続けてきたからだ。
レプロからの独立以降、のんはバーニングプロダクションに忖度するメディア、特に在京キー局の地上波テレビから徹底的な干し上げを受けた。
その圧力は「素材VTRの使用」にまでおよんだ。トーク番組などで『あまちゃん』のVTRが流れる際、のんの出演シーンだけ巧妙にカットして放送されるケースが続出したのだ。
そういった状況に対し、宮藤は「週刊文春」(文藝春秋)2016年7月7日掲載の連載コラムで、このように苦言を呈していた。
<そう言えばトーク番組で『あまちゃん』の話題になり懐かしい映像が流れたのですが、映像使用の許諾が取れなかったのか、アキ(能年玲奈さん)がワンカットも映ってなかった。代わりに前髪クネ男(勝地涼くん)がガッツリ映ってて笑った。あまちゃんは能年さんの主演作ですよ、念のため>
周知の通り、レプロから独立する際、彼女は本名である「能年玲奈」という名前を使用することができなくなり、「のん」で再スタートを切ることになった。
その際にも宮藤官九郎は<のん。思い切ったなあ。渡辺えりさんは『えり子』の『子』を取るように美輪明宏さんに諭され随分悩まれたと聞きますが、彼女は『のうねんれな』の『うねれな』を取ったわけですから大手術。まあ、身軽になりたかったのかな>と冗談を入れたうえで、<あとは旧名時代を凌駕する代表作に巡り会えれば一気に浸透するんじゃないでしょうか。道のりは険しいでしょうが、のんさんの代表作が早く生まれるといいなと思います>とエールを送っている(「週刊文春」2016年8月4日号/文藝春秋)。
そもそも、芸能界を牛耳る芸能プロダクションに逆らっただけで、ここまでの制裁が加えられるという状況そのものがグロテスクなわけだが、その醜い慣習を宮藤官九郎と『いだてん』は打ち破ることができるのか。是非とも頑張っていただきたい。
(倉野尾 実)