【専業主婦の長いS子さん】
これまで納めた年金保険料(44年7か月分):2,643,949円
25年の納付実績による年金の見込み額:639,879円(年額)
①大学生から社会人へ
22歳で就職し厚生年金に加入しました。厚生年金保険料を納めている期間は国民年金保険料も納付扱いになっていました。
②妊娠からの結婚で専業主婦に
妊娠、結婚となり約5年半働いた仕事を辞めています。会社員の妻で専業主婦という立場になり、国民年金保険料の支払いのない第3号被保険者の期間が1年ほどありました。この間に対する将来の年金額は、国民年金保険料を全て納めた人と同じ扱いになるそうです。夫にも年金保険料の上乗せがあるわけでもないため、実際とてもお得です。専業主婦や扶養の範囲内の働き方が根強く残るのもわかる気がします。
③再就職へ
夫が会社を辞めることとなり、お得な第3号被保険者の期間は1年ほどで終わってしまいました。夫婦で無職、そして、アルバイトの期間が半年間あり、この間国民年金保険料を納めています。その後、再就職し厚生年金保険料に加入しました。それから5年弱、厚生年金保険料を払っています。ねんきん定期便には書いてありませんが、この間離婚も経験し、大変な30代を過ごしました。
④再び専業主婦に
再婚し、仕事を辞めて専業主婦になりました。夫が会社員なので、再び第3号被保険者となり10年以上が経ちました。仮に、国民年金保険料を払う立場だったとしたら、同じ金額の年金を受け取るために200万円近い保険料を払う必要があったので、第3号被保険者はやはり強力です。このままS子さんが60歳になるまで夫が会社員であれば、現行の法律では、今後も年金保険料の支払いは一切ありません。
払った額ともらえる額の結論
フリーランスが長い女性は、専業主婦の長い女性の方よりも25年間で100万円以上(1,029,616円)多く年金保険料を納めたことになります。一方、手に入る年金の見込み額は、専業主婦の長かった女性の方がわずかに(1,080円)多いという結果になりました。
さて、今後K子さんが引き続きフリーランスとして働き、残りの期間保険料を払うと、16,410円×183月=3,003,030円(平成31年度保険料で概算)となります。S子さんの保険料負担は制度が変わらない限りゼロのままです 結果、残りの15年が経った時点で増える年金額は2人とも297,819円です。
また、S子さんはこのままいくと、夫の年金に扶養手当のような加給年金というオプションが年間40万円弱上乗せされます。K子さんは現状の売上で仕事を続ければ、加給年金の対象から外れてしまいそうです。
ここまでの結果を表でまとめました。
【45歳時点】
【60歳時点】
数字だけを見れば、働き続けたフリーランスK子さんからすると、S子さんより400万円ほど多く払ったにも関わらず、S子さんより少ない年金額となるわけですから、肩を落とすような結果になっています。
もちろん、専業主婦に苦労がないわけでもないですし、認められた制度を使っているだけなのでS子さんが悪いわけでも何でもありません。しかし第3号被保険者という制度に対し激しい反対意見があることは想像がつきます。
また、夫が個人事業主だった場合、妻が専業主婦でもこの制度はありません。夫の所得が少なくても夫婦共々16,000円ほどの年金保険料を納めなくてはならないのです。
働き方が多様化する中、この点は大きな問題であり、制度の欠陥だと感じます。
さて、この制度はいつまで続くのでしょうか。皆さんはこの現実を知った上で、自分の生き方と働き方をセレクトしていきましょう。
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