「ダイバーシティ=女性活用」の誤解! 日本企業に多様性が広まらない、その理由とは

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Thinkstock/Photo by kzenon

 皆さんは「ダイバーシティ」(多様性)という言葉を聞いて、どのような状態を想像するだろうか?

 ビジネスシーンにおいても「ダイバーシティ」の重要性が説かれるようになって久しいが、日本においては正しい意味が浸透しておらず、誤解されること多いようだ。ダイバーシティコンサルタントの第一人者・佐々木かをり氏に、その背景を伺った。

 転職支援サービス「エン転職」を運営するエン・ジャパン株式会社は1月9日、同サイトのユーザー1万人を対象に実施した「ダイバーシティ」に関する調査結果を発表した。まず、「ダイバーシティという言葉を知っていましたか?」との質問には、「聞いたことはあるが意味はよく知らない」(51%)、「知らない」(19%)との回答が得られ、7割が理解していないことが判明した。

 一方で、ダイバーシティの考え方を教えたところ、95%が大事な考え方であると回答しており、必要性はひしひしと感じているようだ。ちなみに、ダイバーシティが必要とする理由については、「多様な視点を商品・サービス開発に活かすため」(57%)、次いで「優秀な人材の確保のため」(47%)、「社会的マイノリティに対する就業機会拡大のため」(39%)との回答が見られている。

 また、ダイバーシティに積極的に取り組む企業に勤める労働者に、「もっとも積極的に取り組んだこと」を問うと、「女性の採用・活動支援」(51%)、「障がい者の採用・活動支援」(21%)、「外国人の採用・活動支援」(17%)が票を集めた。そして、職場のダイバーシティを促進するために必要なこととしては、半数以上が「ダイバーシティを受け入れる採用の促進」(57%)と答えている。

 このことから、多くの労働者は「女性や障がい者、外国人の雇用を増やすこと」=「ダイバーシティ」と捉えていることが浮き彫りになった。

「ダイバーシティ=女性活用」ではありません! 多様性の本質とは?

 しかし、ただ雇用の幅を広げるだけでは真のダイバーシティとは言えないという。ダイバーシティについてコンサルティングを展開する株式会社イー・ウーマンの代表取締役社長・佐々木かをり氏は、ダイバーシティについて次のように説明する。

 「国籍や宗教が違う人、障害のある人やLGBTの人など様々な人達がいることがダイバーシティの基本です。このことから、ダイバーシティを“女性の活躍推進”と考える企業もありますが、そう一義的なものではないのです」

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佐々木かをり 株式会社イー・ウーマン代表取締役社長
横浜生まれ。上智大学外国語学部比較文化学科卒業。株式会社ユニカルインターナショナルおよび株式会社イー・ウーマン代表取締役。自身が実行委員会委員長を務める「国際女性ビジネス会議」を開催し、ダイバーシティの必要性を発信している。
Facebook https://www.facebook.com/kaorisasakicom/

 もちろん、いまだ男性主体の日本企業のなかで、女性の雇用を増やすことは大切なひとつの側面ではある。しかし本来、ダイバーシティには、その“次のステージ”があるという。

 「第1ステージを多様な人がいる、というダイバーシティとすれば、その第2ステージに『インクルージョン』という考え方があります。『インクルージョン』とは、いろんな人が共存するだけではなく、その人たちが組織の中で活躍できている状態のこと。たとえば、東京大学を卒業した人たちが会議をしている中に、異なる大学出身の人や、外国の人が参加すること、これが第一歩。ダイバーシティですね。

 しかし、その会議では全員が意見を述べることが出来ているかがポイントです。たとえば、東大卒のひとりが『今回は赤が良いと思います』と主張し、他の参加者がなし崩し的に同調してしまった場合、あるいは、発言機会が与えられない場合、意見の上では多様性がありませんよね。多くの日本企業は採用基準のあり方や年功序列の存在などのために、教育や家庭環境が似ている人が集まりやすく、同じような考え方に偏りがちとも言えます。ここに、さまざまな背景や立場の人が加わり、多様な意見が交わされることが『インクルージョン』です」

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