名作「罪と罰」で舞台女優として芽吹きはじめた大島優子

文=フィナンシェ西沢
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 劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。

 学生時代、教養の一貫や学校の課題として海外純文学の大作に挑戦し、そして挫折した経験があるというひとは、少なくないと思います。19世紀後半のロシアの作家ドストエフスキーは、誰もが名前を知る文豪でありながら、そうやって腰をひけさせてきた文豪のひとりでしょう。

「自分は特別な人間だ」

 重厚な作風から、現代社会とはかけ離れた世界観というイメージもありますが、ドストエフスキーの代表作である「罪と罰」は、もはやインフラと化したSNSのなかで、何者かでありたいと自己承認欲求を声高に叫ぶ現代人との共通性を見出すことができます。

 その「罪と罰」が現在、イギリス、ロイヤルシェイクスピアカンパニー出身の演出家、フィリップ・ブリーンの演出で上演中。主演は三浦春馬で、主人公に救いをもたらすヒロイン役には、海外留学から戻ってきたばかりの大島優子が挑んでいることでも話題を呼んでいます。

 物語の舞台は1860年代の帝政ロシア、サンクトペテルブルク。優れた知性を持つ青年ラスコリニコフは、階級社会のなかで貧困にあえぐ多くのひとの絶望を目の当たりにし、自分のような「特別な人間」ならば、社会の大儀のためには法を犯す権利があると考えていました。

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