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本命登場!~カマラ・ハリス 史上初の女性大統領なるか? 2020大統領選

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写真:AP/アフロ

 トランプによる米国政府の閉鎖が続き、アメリカ中が混乱にあった1月21日、2020大統領選の本命候補の一人、カマラ・ハリスが出馬を正式表明した。

 出馬表明の日が「キング牧師デー」だったのは偶然ではない。カマラは一般市民を顧みないトランプに真っ向から対抗し、大統領として市井の人々に尽くすべく、「カマラ・ハリス・フォー・ザ・ピープル」をキャッチフレーズとしている。黒人の権利のために命を捧げ、しかし究極のゴールは異人種間の融和としたキング牧師を標榜しているのだ。

カマラ・ハリス:2020大統領選キャンペーン告知ビデオ

カマラ・ハリス(民主党)

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現職:上院議員(カリフォルニア州)
前職:カリフォルニア州司法長官
人種民族:インドとジャマイカのミックス
性別:女性
年齢:54歳
最終学歴:カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクール
宗教:キリスト教徒(バプティスト)
公式サイト:https://kamalaharris.org/

 インドからの移民であった母親(故人)は乳ガン専門の科学者、ジャマイカからの移民の父親は経済学の教授。

 サンフランシスコ市検事補時代より凶悪犯罪を訴追し、同時にLGBTの権利、青少年の権利など公民権保護にも熱心。

 2013年、あるイベントでオバマ大統領(当時)がハリスを「明晰、熱心、強靭(中略)、かつ米国でもっとも美しい司法長官」と紹介。「もっとも美しい」が女性差別的であると批判され、大統領はのちに謝罪。この件は日本でも報道された。

 バリバリと仕事を進めるバイタリティ、性格の陽気さ、上記のエピソードなどが合わさり、以前より知名度が高く、2020大統領選の重要候補と目されている。

黒人? インド系? 移民?

 両親はカマラが幼い頃に離婚し、カマラと妹(法律家)はインド移民の母親によって黒人社会で育てられている。「Kamala」はサンスクリット語で「蓮」を意味し、ビリヤニを料理するなど母親からインド文化を受け継ぐ一方、色濃いアメリカ黒人文化も持つ。大学は“歴史的黒人大学”と呼ばれるハワード大学、信仰も母方のヒンドゥ教ではなく、父方のキリスト教を選んでいる。

 立候補表明の直前にトーク番組『レイト・ショー』内で公開した『ムード・リミックス』というビデオクリップでは、好きな曲としてプリンス、ビヨンセ、エドウィン・ホーキンス、ボブ・マーリィ、アレサ・フランクリン、ケンドリック・ラマーと、ゴスペル、R&B、レゲエ、ラップを挙げ、「大統領的な曲」として、ファンクの有名なバンド、ファンカデリックの非常に黒人色の強い「ワン・ネーション・アンダー・ア・グルーヴ」を推している。ビデオクリップで挙げられたアーティストのうち、非黒人はレディ・ガガだけだった。

 オバマ前大統領と同じく、人種ミックスであってもアメリカでは黒人なのである。アメリカの選挙では性別と同様、人種が大きく作用する。「移民」であることも同様だ。ハリスは子供の頃、母親が合法滞在者であるにも関わらず、空港の入管で緊張していたことを覚えており、アメリカ白人の夫が入管であまりにも気楽に振る舞うことに、かつて驚いたと語っている。

 こうしたエピソードはハリスが自身はアメリカ生まれであっても移民への深い理解と共感を持つことを表しているが、杞憂する支援者もいる。オバマ前大統領が「ケニア生まれ、大統領の資格なし」と謗られたことへの警戒心があるのだ。そこからCNNのアンカーマンが「カマラはアメリカ生まれであることを最初に告知するといい」という趣旨の発言をおこなったが、これは逆に批判された。

優れたリーダーなら性別も人種も問わない

 昨年11月の中間選挙ではあらゆるマイノリティにアンチを唱えるトランプにアンチを唱える大量のマイノリティ、特に女性議員が当選した。この流れは大統領選にもすでに顕著に現れている。現在、正式に立候補を表明している候補者たちの中で「大物」なのはカマラ・ハリスを筆頭にいずれも女性である3人の上院議員だ。オバマ政権で閣僚を務めたメキシコ系の男性、ジュリアン・カストロも出馬している。

 バラク・オバマが史上初の黒人大統領となり、その揺り戻し現象としてトランプとその支持者(の一部)が今、マイノリティへの強烈なアンチを唱えている。2020大統領選出馬者には、選挙戦の最中からこの脱線を元に戻す職務がある。同時に、当選するにはマイノリティ色をどこまで強く出す/出さない、という問題がある。マイノリティ人口が増えているとは言え、有権者の多数は今もまだ白人だ。本来、大統領は人種民族も性別も超え、すべての市民に尽くすものだが、アメリカでは人種はやはり非常に重要な鍵となる。

 ハリスの夫、ダグ・エンホフが妻の立候補早々、支援者にニュースレター・メールを出している。メールの件名は「カマラのハズバンド(ダグ)」と、支持者ならずとも思わず開いてしまうものだった。メールにはカマラとダグの、いかにもオシドリ夫婦な笑顔のアップ写真があり、ダグが白人であることを、そうとは言わずに支持者に知らせるものだった。

 先に挙げたメキシコ系のカストロ候補も、ファーストネーム「Julian」を通常は英語読みで「ジュリアン」としているが、ある番組で司会者から本来のスペイン語読み「フリアン」と呼ばれていた。フリアンと名乗ればヒスパニック有権者には親しみが湧く。その一方、非ヒスパニック、中でも「メキシコ国境の壁」を支援している層には「国境に押し寄せる移民の仲間」的なニュアンスを与えてしまう。そもそもカストロ候補は自身がメキシコ系であるだけに、メキシコからのビザなし移民問題への対応には慎重さが必要となる。

 アメリカのマイノリティ政治家は、エスニック・コミュニティを含む地方行政ではマイノリティであることが有利になることもあるが、中央政界に打って出る際には、こうしたジレンマを抱えてしまう。これを乗り越え、大統領となったのがバラク・オバマだった。初代アメリカ合衆国ジョージ・ワシントンが就任した1789年から、実に220年後のことだった。

 そして2020年。アメリカ大統領選には「優れたリーダーなら性別も人種も問わない」空気が醸し出されている。同時に「それでもマイノリティは慎重であれ」という警告もなくなってはいない。大統領選の行方はいかに。

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