アメリカはゲイを大統領に選べるか?~同性婚者「ピート市長」の立候補

文=堂本かおる
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皆保険の実現なるか

 今回の大統領選、民主党の候補はぼぼ全員が「皆保険」を公約としている。アメリカは先進国で唯一、皆保険を持たない国と言われ、国民の多くが医療費に苦しめられてきた歴史がある。そもそもはファーストレディ時代のヒラリー・クリントンが皆保険案を打ち出し、オバマ前大統領が共和党からの反対に苦労し、多くの妥協の末に成し遂げたのが、完全な皆保険ではないオバマケア。それすら廃止することを公約に掲げたのがトランプだ。

 ブッカーも他の多数の候補者と同じく法学専攻の法律家であり、人権を前面に打ち出している。貧者も安心して医療を受けられる皆保険は必須公約だ。一方、ビジネスのバックグラウンドを持つブートジェジは皆保険に賛成しながらも、財源については慎重な発言を行っている。ただし自身が同性婚をしていることもあり、種々のLGBTQ問題を含む人権問題には非常に敏感だ。

 ブートジェジはオバマ前大統領が「民主党の未来を担う人物」と評したことからも分かるように、オバマ式の冷静なリーダーシップを持つ。ブッカーは人情家であり、目標に突進するダイナミックさを持つ反面、過去には勢いが余って脱線することもあった。偶然にもほぼ同時期に出馬したこの二人は興味深い対称性を持つと言える。

アメリカはゲイの大統領を受け入れるか

 二人ともアメリカのリーダーとなるには十分な資質を持つと言える。だが、共和党のみならず民主党支持者からもバッシングが出る可能性が大いにある。アメリカには強固なアンチ・ゲイが依然として存在し、すでに合法となっている同性婚を廃止したがっている者も多い。49歳で独身のブッカーには以前よりゲイの噂が付きまとっているが、ブッカーは否定も肯定もせずにいる。

 ここにきて筆者は改めてアメリカ国内の乖離を思い知らされた。筆者は大統領がゲイであってもなんの違和感も抱かない。ニューヨーク在住であるため、インディアナ州のブートジェジのことは寡聞にして知らなかったが、隣州ニュージャージーのブッカーについては市長時代から馴染みがある。ゲイの噂がたつたびに「そこはポイントじゃない」と思ってきた。ブッカーが優れた政治家だと知っているからだ。

 アメリカには大統領が人種的マイノリティ、女性、ゲイでも全く気にしない層と、それでは許せない層が共存する。10年前に「優秀であれば属性は問わない」をオバマ大統領の当選によってすでに実現しているとはいえ、その揺り戻し現象としてトランプが当選している。

 もしブッカーが予備選を勝ち抜き、民主党候補となった場合、有権者はブッカーにゲイであるか否かの返答を迫るのだろうか。そして、ブッカーは答えるのだろうか。
(堂本かおる)

2020大統領選まで、あと634日(2/7付)
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