連載

自己破産の増加と銀行カードローンCMの関係 「貸付自粛制度」で自己破産や自殺は減るのか

【この記事のキーワード】
自己破産の増加と銀行カードローンCMの関係 「貸付自粛制度」で自己破産や自殺は減るのかの画像1

生き延びるためのマネー/川部紀子

 ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。テレビを見ていると、消費者金融や銀行カードローンのCMを見ない日はない気がします。ひと昔前は消費者金融ばかりでしたが、最近は銀行カードローンのCMが増えたと思いませんか? 地方の銀行でも地元出身の超有名タレントを起用したカードローンのCMが流れています。北海道の銀行カードローンのCMには北海道出身の大泉洋やタカアンドトシが出演中です。銀行がカードローンに力を入れていることが伺えます。

 それもそのはず、低金利が続く今、昔ながらの方法で利益を上げることが難しくなっている銀行にとって、個人向けのカードローンは大きな収入源になっているからです。そんな中、2019年3月29日(金)から全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センターで「貸付自粛制度」がスタートします。

「貸付自粛制度」とは?

 まず「貸付自粛制度」を簡単に解説します。

 浪費やギャンブルの依存などで生活に支障が生じるおそれがある場合、(原則)本人がその旨を申告することで、全国銀行個人信用情報センターに登録されます。センターは一定期間、氏名、性別、生年月日、住所、自宅電話番号(または携帯電話番号)、勤務先名、勤務先電話番号といった情報を銀行に提供し、銀行が貸付を自粛することで個人の借り過ぎを防ごうという制度です。

 登録期間は5年間で、途中で登録の撤回が可能ですが、申告日から3カ月は撤回できません。また、親族等の代理人の申告により登録されている場合は、本人が撤回しようとしても受け付けられない仕組みが備わっています。

 なぜこのような制度ができるかというと、借り過ぎる人が多く、自己破産や自殺などに繋がることもあるからでしょう。

いまさら「貸付自粛制度」と言われる理由

 実は、この貸付自粛制度、既に消費者金融やクレジットカード会社には存在しています。日本貸金業協会が(株)日本信用情報機構(JICC)と(株)シー・アイ・シー(CIC)というブラックリストのチェックでおなじみの機関への登録を行ってきたのです。

 また、消費者金融、クレジットカード会社には「総量規制」というものも存在します。こちらも、借り過ぎ・貸し過ぎを防ぐために設けられたもので、年収の3分の1を超える金額を貸付けてはならない、というルールです。

 2004年以降、自己破産は減っていました。また貸金業法による規制が完全に法制化された2010年の翌年には、自己破産者の数はさらに大きく減少し、それ以降も減り続けてきました。貸金業法による規制には一定の効果を感じます。

 ところが2016年に、13年ぶりに自己破産者が増えました。この時期は、銀行カードローンの活況と重なります。

 自己破産者増のデータを受けてか、自主規制は行われていたはずです。しかし普通の会社員がカジュアルに銀行カードローンを利用しているケースが散見されたのです。こうした流れがあるため、どうしても貸付自粛制度に対して「いまさら」感を感じてしまいます。

銀行の「貸付自粛制度」で何か変わるか?

 問題なのは、消費者金融、クレジットカード会社、銀行に貸付自粛制度が整ったとしても、本人が申告するのが大原則なので、結局は自らの意志と行動が重要になってきます。親や配偶者が申告できるのは、本人が所在不明などの場合に限られ、非常に難しいと思われます。

 また、一度始まった借金のループは、「もう借りない!」と言ったところで断ち切るのは簡単ではありません。何せ、今ある借金を返しながら生活しなければならないわけですから。 

 さらに、銀行には引き続き総量規制がない点も不安材料です。収入の安定した会社員などは、消費者金融やクレジットカード会社ではなく、銀行カードローンを利用する傾向が今後も強くなると思われます。

 度重なる値上げや消費増税、上がらない給料、そんな時代にこの程度の規制で残念な借金が大きく減るとは考えられません。結局、制度では自分の身を守れません。今借金がある人は、今回のニュースを受けて、自分の身は自分で守ることの必要性を今一度感じてもらえたらと思います。「自己破産」という方法もありますが、簡単に踏み切れず多くの方が苦しみます。借金は命に関わる重大な問題なのです。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。