AIは書類選考だけでなく面接も行うようになる
ここまで読まれた方は、AIによる人材採用は書類選考までの効率化に限った話だと思われたかもしれない。しかし、AIは面接官の仕事も代行することになる。
面接こそ人間の出番ではないか、と思えるのだが、実は人は見た目や相性、その日の気分や天候、忙しさなどといったさまざまな要因で選考基準が容易にブレてしまうのだ。
一方、AIは常に客観的で公平な判断を行う。となれば、面接もAIが行ったほうが間違いなさそうだ。ただ、AIによる面接はテーブルを挟んで対面する形は取らない。文字ベースか音声ベースで質疑応答を行うことで進められる。
たとえば人材サービスのエン・ジャパンは、2017年12月に学生向けのAI面接体験会を開催している。このときの面接相手はスマートフォンだった。
体験をした学生からは、外見だけで判断されない安心感があり、面接官にありがちな威圧感がなくて良かったとの声が多かったという。一方で、相手の表情や反応が見られないのでやりづらかったとか、笑いが起きて和むこともなく淡々と進むので戸惑ったとの声もあった。
学生にもメリットがある
それではエントリーシートでAIが合否判断を出すことについて、学生たちはどのように思っているのだろうか。
2018年3月にHR総研が行った「2019年卒学生 就職活動動向調査」では、AIによるエントリーシートの合否判定について賛成か反対かの問いに対して、文系56%、理系48%と約半数が反対と答えた。賛成は文系11%、理系16%と少なく、「どちらともいえない」は、文系が33%、理系が36%となった。
賛成の理由には、「人間がやらなければならない作業ではない」「その分面接時間が増えるのであればよい」「人間より公平に評価される」「人間の気分のムラがない」などがあった。
一方、反対の理由には、「機械には人の心がない」「学生が時間をかけたエントリーシートなのだから、企業側も時間をかけて見るべき」「機械的な判断では測りきれない」「一緒に働くのは人なのだから」などがあった。
この調査では圧倒的に反対が多かったが、学生にとってはメリットもあるだろう。たとえば上記調査で学生が答えているように、人事担当者の好みといった嗜好性が排除され、より公平な選考が行われることや、人事担当者の偏見によって卒業した大学で弾かれることがなくなることも期待できる。
新卒だけじゃない。ブログやSNSが履歴書になる?
AIが人材採用に関わってくると、エントリーシート以外の情報も収集できるようになる。ずばり、インターネット上の情報を参照できるようになるのだ。
たとえば、SNSでの発言や、ブログに投稿された記事から、その人となりが判断されるようになってくる。極端な場合、ネット上の情報が履歴書代わりになってくるのだ。
すでにこの手法で人材と企業をマッチングさせるサービスが登場している。2016年5月に創業した「scouty(スカウティ)」だ。同社は2017年5月から、AIを使ってSNS上のデータから履歴書を作成し、企業のヘッドハンティングに活用するサービスを始めた。まずはエンジニアに特化したサービスとなっている。
スカウトされる側が改めて同社に登録する必要はない。scouty側が勝手に情報を収集して、企業が求めている人材をネット上から探し出すのだ。scoutyのAIは、GitHubやTwitter、Facebookを含む約10種類のソースから情報を収集し、履歴、職歴、得意分野、技術力、ビジネス力、ソーシャルインフルエンスなどのスコアを表示した履歴書を生成する。また、職歴などから転職の可能性も分析する。こうして生成された履歴書を、登録ユーザーである企業側が閲覧して利用することができるのだ。
そうすると、次のようなことも起きる。あなたがSNSなどで「もっと条件の良い企業に転職したいなぁ」と呟く。するとしばらくして、公開していた連絡先に、「○○社の者ですが……」とスカウトメールが届くのだ。やや気味の悪さも感じるが、「まさに」というタイミングであなたは人材として発見される。
scoutyでは、より積極的にスカウトされたいという人のために、クロール申請も受けつけている。
同社によれば、導入企業がスカウトした場合の返信率は約30%で、その内の面談率は約60%と、マッチ率が高いことを示している。同社サイトには、同社のサービスにより「自分さえも気づいていない、本当の価値」が見えるのだと記載されている。たしかに、現在の職場で力を生かしきれていない人がAIによって「天職」に導かれる可能性がある。