人材採用でのAI導入進む いくつものメリットと弱点、そしてAmazonの失敗

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Amazonの失敗

 ところが、AIによる採用は万全ではない。そのことを示したのが、2018年に数多く報告されたAmazonのAI採用ツールの欠陥だった。同社のAI採用ツールが、女性の応募者を差別していたことがわかったのだ。

 このAI採用ツールは2014年から開発され、応募者の履歴書を解析して5点満点でランクをつけるようになっていた。同社はこのAIに、過去10年分の応募者の履歴書を解析させた。するとAIは、履歴書に「女性」という単語や女子大の名前が含まれていると低い点数を与えるようになった。過去の応募者のほとんどが男性技術者だったため、男性を採用することが良いことだと学習してしまったのだ。

 Amazonはこの差別を是正するためにプログラムの改善を行ったが、他の差別を行う学習をしていないという保証が得られなかったため、開発チームは解散したという。Amazonの失敗は、すでに自社の採用が男性エンジニアに偏っていたことにより、AIが学習したデータに多様性がなかったことを示している。

 これはどこの業界や企業でも起こり得ることだ。そのため、HRTech開発会社や導入を検討している会社は、AI採用ツールに学習させるデータの質に注意しなければならないことと、偏った学習をした際に補正する仕組みを検討しなければならないことを教訓とするだろう。

それでもAIによる人材採用は普及する

 人材採用にAIを導入することについて、前述の通り、学生は反対派が賛成派を大きく上回る。また、AmazonのAI採用ツールが差別的な選考を行ったという問題も生まれた。しかし、HRTechが人材採用を含めた人事業務の生産性を高めることは間違いない。

 そのため、しばらくはAI採用ツールの弱点である偏ったデータからの学習を補正する仕組みと、データにない新しいタイプの人材を弾かない仕組みの改善が急がれる。

 また、すべてAIに任せるのではなく、AIによる効率化で浮いた時間を人と人が接する時間の確保に活用することも重要になってくるだろう。これらの課題をクリアしながら、HRTechは着実に普及していくはずだ。

 これから就活を行う人たちは、AIによる客観的で公平な評価に耐え得るスペックを身につけていく必要がある。面接マニュアルはもう通用しない。

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