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“スーツ離れ”で赤字転落なのに、郊外型店舗は存続…なぜ紳士服チェーンは潰れないのか

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(左)紳士服のAOKI/(右)洋服の青山(画像はWikipediaより)

 “スーツ離れ”の加速により、青山商事、AOKIホールディングス(以下AOKI)、コナカといった紳士服チェーン大手が、相次いで赤字に転落している。

 昨年11月に各社が発表した2018年4~9月期連結決算(コナカのみ2018年9月期)によれば、各社の純損失は青山商事が1億2300万円、AOKIが10億5600万円、コナカが4億9300万円だった。

 昨年は悪天候や自然災害が国民の消費意欲に影響を及ぼしたという見方もできるが、スーツ需要の低下は、今に始まった話ではないだろう。

 12年前にはスーツの主な購買層である団塊世代が一気に定年退職する“2007年問題”が起こった。小島ファッションマーケティング社がまとめた資料を見ても、紳士服チェーンの売り上げのピークは1994年(6570億円)と、すっかり昔の話だ。2001年に5000億円を下回って以降、売り上げは劇的に回復することもなく、ここ数年は4000億円台前半で低空飛行を続けている。

 ただ、店舗に足を運んでみればわかることだが、どこの紳士服チェーンも客や販売員の姿はまばらなのに、不思議と閉店には至っていない。各社の赤字は実際、どれくらい深刻な問題なのか。マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏に話を伺った。

赤字なのに郊外型店舗は存続……なぜ紳士服チェーンは潰れないのか

「“製品ライフサイクル”というマーケティングの考え方でいえば、紳士服チェーンは1970年代前半が“導入期”、1970年代後半から1990年代にかけてが“成長期”、2000年代には“成熟期”を迎えました。しかし昨今は、製品ライフサイクルの最終段階である“衰退期”に突入しており、利益が下がり続けているという状況です。

 とはいえ全国各地には、紳士服チェーンの店舗がまだまだ消えずに残っています。一つの要因は、紳士服チェーンが、商品の生産から販売までを自社で行う“SPA(製造小売)モデル”に、かなり早い時期から取り組んでいたおかげでしょう。ファストファッションですとGAPやユニクロがSPAモデルを採用し、低コスト化を実現していますが、SPAモデルの紳士服チェーンもそもそも低コスト体質になっています。

 

永井 孝尚/マーケティング戦略コンサルタント
日本IBMでマーケティング戦略マネージャーなどを担当後、独立。マーケティング戦略の講演・研修、新規事業開発支援を行っている。著書に、累計60万部突破の『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ(KADOKAWA)、10万部突破の『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)、ほか多数。最新著は『なんでその価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』(PHP新書)。
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 もともと、紳士服といえば都会の駅前にあるような百貨店で購入するのが一般的でした。ですが1972年、青山商事の創業者・青山五郎氏がアメリカを視察したとき、現地では巨大な駐車場を構えた郊外のショッピングセンターが大賑わいでした。当時、高度経済成長を続けてマイカーブームとなっていた日本にも、必ず同じ波が来ると判断した青山氏は、1974年、紳士服の専門店を郊外に幹線道路に面するように出店しました。これが、業界最大手の『洋服の青山』の始まりでした。

 都会にある百貨店のお客さんは一見客が多いものですが、郊外型店舗に車でわざわざ来店してくるお客さんは、目的が明確。ほぼ確実に商品を買ってくれます。販売員も、紳士服の知識だけを持っていればいいわけですから、少人数で店舗を回すことも可能になりました。郊外型店舗というのは当時の日本からすると珍しい試みだったものの、1着あたりの単価が高い紳士服チェーンにとっては、非常に販売効率がよかったのです」(永井氏)

 一見すると閑散としている郊外の紳士服チェーンだが、そのあり方は理にかなっていたようだ。そうはいっても顧客のスーツ離れは着実に進行しており、これは日本国内だけの現象ではないらしい。

「2005年の“クール・ビズ”の影響は、紳士服業界にとって実に大きかったのではないでしょうか。『ノースーツやノーネクタイでかっこよく仕事しましょう』ということで、スーツを着なくなりました。単価は一気に下がったと思われます。

 さらにGoogleやAppleといったグローバル企業や日本発のベンチャー企業でも、カジュアルウェアで働くのが当たり前になってきています」(永井氏)

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