“スーツ離れ”で赤字転落なのに、郊外型店舗は存続…なぜ紳士服チェーンは潰れないのか

【この記事のキーワード】

スーツが売れないなら、別事業で巻き返す? カラオケや複合カフェ、多角化する企業形態

 では、日本の紳士服チェーン各社が再成長を遂げるためには、どのような手を打つべきなのだろうか?

「郊外型店舗という従来のビジネスモデルは、すでに随分と昔に限界を迎えています。対応策を整理して考えるには『アンゾフの成長マトリックス』という考え方が役立ちます。市場を『新市場』『既存市場』、商品を『新商品』『既存商品』に分けて考えたものです。市場と商品の組み合わせは、次の4つになりますよね。

①市場浸透戦略…既存市場+既存商品
②市場開拓戦略…新市場+既存商品
③新商品開発戦略…既存市場+新商品
④多角化戦略…新市場+新商品

 市場浸透戦略として紳士服チェーンにとって参考になる事例は、ZOZOが昨年発表した、採寸用ボディースーツ『ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)』です。現在の紳士服チェーンは、既製のスーツを裾上げする程度のことにしか対応できていません。スーツがより身体にフィットできればそれ自体が大きな価値ですし、紳士服をもっと市場に浸透させられる可能性があります。ZOZOは苦戦し続けていますが、『フルオーダースーツ』という考え方は、紳士服チェーンにとってまさに市場浸透戦略そのものです。

 市場開拓戦略で参考になるのは、カジュアルウェア業界のユニクロです。ユニクロは海外事業に注力しており、今や海外事業の売り上げが国内を上回っています。ここで大切なことは、いかに現地の人々のニーズに最適化するか、ですね。他にも、紳士服チェーンの市場開拓戦略の取り組みとして、女性用ビジネスウェアにはすでに取り組んでいます。新商品開発戦略については、すでに紳士服チェーンは、クールビズ対応のビジネスウェア品揃えを増やしていますよね」(永井氏)

 もっとも、チェーン各社では必ずしも紳士服に固執せず、業態を“多角化”させる戦略を取っているそうだ。

「例えばAOKIの2018年4~9月期の決算説明会資料を見ますと、紳士服事業の営業利益は15億円の赤字です。ですが同社は、“エンターテイメント事業”としてカラオケルームの『コート・ダジュール』や複合カフェの『快活CLUB』にも着手しており、特に快活CLUBの営業利益は17億円。紳士服事業の赤字をカバーできていますから、グループ全体としては成長の兆しがあるといえるでしょう。

 カラオケルームや複合カフェは一見すると紳士服チェーンとは全く違うように見えますが、紳士服事業で培ってきた郊外型店舗経営のノウハウは活きます。業態を多角化しつつ、新規事業を立ち上げるのは、企業として王道です。

 新規事業は失敗する可能性も高いものです。だからまずは顧客を徹底的に絞り込み、小規模に始めてみる。試行期限や投入予算の上限を予め決めておき、上手く行きそうであればお金をどんどん投資して急速に育てていく。予め決めておいた期限が過ぎたり、予算に達したりしたら、早めに見切って撤退。紳士服チェーンは主力事業である紳士服販売が消滅する前に、早急に数多くの新規事業の種を撒いた上で、間引きしながら可能性ある事業を育てていく姿勢が求められています」(永井氏)

 なお、アパレルとは無関係なエンターテイメント事業に積極的なAOKIに対し、青山商事は「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」や「キャラジャ」といったカジュアルファッションブランドを手がけている。だが、これらは2018年4~9月期の売り上げが前年同期比-14.8%に落ち込んでおり、紳士服事業の穴埋めとはなっていない。青山商事で好調なのはむしろ、前年同期比+4%の売り上げをマークしたクレジットカード事業である。

 もはや紳士服チェーン各社は、メインの紳士服事業を立て直すよりも、別事業への注力にシフトしていると言えるのかもしれない。

(文=森井隆二郎/A4studio)

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