いざHRTスタート、のその前に
毎回注釈で書いているように、HRTを始めるためには必ず医師による診断と処方が必要である。婦人科、それもできれば更年期外来を訪れるのがベストだろう。
HRTを本格的に始めるためには事前にいくつかの検査検診を受けなければならない。治療前に受けなければならないのは乳がん検診と子宮がん検診、そして血栓症のリスクを調べる検査だ(これらの検査は、HRT治療中は必ず年に1度受けなければならない)。
なお、HRTは万人が受けられるという治療法ではない。下記の項目に当てはまる人は禁忌となっている。
・乳がんや子宮体がんの疑いがある人、既往がある人
・血栓性静脈炎や肺塞栓症のある人
・心臓病や脳卒中、脳梗塞の既往のある人
・重い肝臓障害がある人
・子宮内膜症、子宮筋腫、糖尿病、高度な肥満、高血圧の人は、薬の量を調整するなど充分に注意してHRTを行う必要がある
そうそう、喫煙者にも薬は出してもらえない。HRTを始めたいなら、喫煙者の方はまず禁煙を。
HRT=乳がんという刷り込みと最新情報
「HRTするとガンになるよ!」――そんなセリフをどこかで聞いたことはないだろうか。実際私もそんな流言飛語を信じきっていたことがあったし、婦人科の医師からもほぼ同等の言葉を言われた体験がある。
だが、更年期について学び、メノポーズカウンセラーとなった現在。リスクはゼロではないけれど、決してHRT=乳がんではないということがよくわかった。
連載の第一回目と第二回目でもそのあたりのことは少し触れているが、ここではHRTと乳がんに関する最新のトピックについて書いてみたい。
2018年12月12日の朝日新聞は「更年期ホルモン療法、再び注目」として記事を掲載した。そこには、当事者の例や医師のコメントと共に、HRTが更年期の辛い症状を改善するために有効な治療法であることが書かれている。また、HRTと乳がんについては「乳がんとの関連についても研究が進み、日本産婦人科学会と日本女性医学学会によるガイドラインでは、乳がんでない人の『乳がん発症に及ぼすHRTの影響は小さい』としている」と明確に記されているのである。
ただ残念なことに、上記のような情報を知ってか知らずかは定かではないが、婦人科の医師の中にも未だ「HRTには賛成しない」と言う人は少なくない。
HRTをスタートするためには、まずHRTを否定しない医師探しから、というのが悲しいかな今の日本の現状である。