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男性向けメディアは成熟社会における<男性の欲求>をどのように満たしてゆくか――「ヤレる女子大生」炎上後のメディアの在り方とは

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「ヤレる女子大生ランキング」が大炎上した「週刊SPA!」2018年12月25日号

 「週刊SPA!」(扶桑社)の「ヤレる女子大生ランキング」が大炎上したことは、これからのメディアの在り方にどのような影響を与えたか。「ヤレる可能性の高い大学」の第3位として同誌に掲載されたフェリス女学院大学の教授で、ジェンダーとメディアのつながりに詳しい諸橋泰樹先生に、話を伺った。

 騒動の発端となったのは、「週刊SPA!」12月25日号の記事だ。男性が女性にギャランティを払って飲み会に来てもらう“ギャラ飲み”を紹介し、「ヤレる」、つまり性行為に及びやすい女子の大学生の特徴などを掲載していた。この記事を受けて、現役の女子学生らがネット上で記事の撤回を求める運動を展開。記事を「女性蔑視」だと看破した彼女らに賛同する署名は4万筆を超えた。ランキングに載せられた実践女子大学、大妻女子大学、フェリス女学院大学をはじめ掲載された5大学全てが扶桑社に抗議を表明し、「週刊SPA!」編集部は謝罪文を公表するに至っている。

 編集部の謝罪に対して、女子学生たちはなおも疑問を投げかけ、直接の会談も実現。1月29日号の「週刊SPA!」には、女子学生らのグループと編集部の会の様子が2ページにわたって掲載された。

 まず、編集部は女子学生たちに謝罪し、<本誌は長年、男性の欲求を満たすことを一つのテーマとしてきた男性週刊誌だ。 (略)裏返せば、女性を研究することに人一倍愛情を注いできた週刊誌と言っても差し支えない。その本質について、編集長の犬飼は、「語弊があるかもしれませんが、我々は女性のことが好きなんです」と説明。そのうえで、「女性と親しくなりたい、モテたいという前提がありながら、結果的に「女性をモノのように見る」視線があったことは間違いない」と認めて、頭を下げた。>(記事から一部抜粋、以下同)という。

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女子大生との対談が行われた「週刊SPA!」1月29日号。特集のテイストも変化している。

 両者の意見交換は穏便に行われ、編集部はこの反省を生して、<性にまつわる特集については性的合意について常にチェックする体制を整え、それを前提とした誌面づくりを行っていきたい>と明言するに至った。

 これは雑誌メディアに限らず、広告媒体まで含む日本の多くのメディアにとって大きなターニングポイントになるのではないか。これからの時代、メディアのあり方はどう変わっていくのか? フェリス女学院大学の諸橋泰樹先生の見解を聞いた。

「週刊SPA!」が追い求めてきた<男性の欲求>の正体ーー“誰も傷つけない完璧な表現”は存在しない

――「ヤレる女子大生ランキング」は、数年前ならここまで炎上せず、「男性向けの週刊誌なんだからいいでしょう」と不問にされていた可能性もあります。編集部が謝罪するに至ったことは、社会の風向きが変わっていると言えるのでしょうか。

 「まさに女子学生たちが『女性蔑視』と喝破したとおりですが、その根底には、『Male Chauvinism』(メールショービニズム=男性至上主義)に根ざした女性差別、そして人権侵害、暴力の問題があります。

 70年代には、ウーマンリブや『行動を起こす女たちの会』による抗議運動があり、80年代は『セクハラ』の新語・流行語大賞、ポルノやミスコンなど性の商品化論争、そして90年代には、ブルセラや援助交際が問題となってきました。およそ40年前から、社会やメディアにおける女性蔑視のメンタリティが非難されてきたことと、構造的には同じなのです。

 しかしこれまでは、当事者である女性たちが声を挙げにくかったことは確かでしょう。この風潮に変化を与えたのは、スマートフォンによるSNSの普及と、2016年頃より米国をはじめ世界的に広がりをみせた『♯Me Too運動』の功績が大きいと言えます。
日本での『週刊SPA!』の大炎上も、海外の女性たちの運動に学んだ女子学生たちが“当事者”としてアクションを起こしたことがきっかけでした。この行動力は素晴らしいものです。

 フェリス女学院大学は、くだんのランキングで名が挙がっていましたから、ぼくの受け持つ1年生のゼミでも、ある学生がこの炎上騒動を扱った1月の新聞を用いて、発表を行いました。多くの学生は、SNS やLINEのニュースを通じて騒動を知ったようですね。これが他大学だったら『あそこの大学ってそうなんだーと自分が人ごとのように思っていただろうけれど、自校名が挙がって他人からそのように思われる側になったんだ、と気づかされたようです。

ヤレる女子大生記事、「週刊SPA!」は「ヤリマン生息数が多い大学」「就活ビッチの多い大学」なども特集していた

 12月25日号の「週刊SPA!」(扶桑社)が「ヤレる」、つまり性行為に及びやすい女子大生の特徴を紹介したある記事が炎上した件について9日、大学側からの…

ウェジー 2019.01.10

 これまではメディアの言説にいちいち抗議をしていたらキリがないとして、“公化”を避けてきた向きがありました。しかし、現実にセクハラや女性差別が社会問題となっているかで、人々には『これでいいのか?』というモヤモヤした思いが積み重なっていたはずです」(諸橋氏、以下同)

――「週刊SPA!」編集部は、「ヤレる女子大生ランキング」に不適切な表現があったことを認め、そのなかで<本誌は長年、男性の欲求を満たすことを一つのテーマとしてきた男性週刊誌だ>と自己分析を加えています。彼らの追い求めてきた<男性の欲求>の正体とは、いったいなんだったのでしょうか?

 「<男性の欲求>のなかには、セックスが含まれているのは明らかですね。セックスそのものは人間の営みであり、もちろんこれを否定するいわれはありません。しかし、編集部のセックスに対するスタンスには大きな問題がありました。

『ヤレる女子大生ランキング』のような、男性が不特定多数の女性とカジュアルに『ヤレる』という視点には、女性が基本的人権を有するひとりの人間、働く仲間ではなく、『労働力を再生産するもの』という認識があります。

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