
3月24日まで各地で公演
劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンタテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台では、ドラマや映画などの映像では踏み込めない大胆できわどい表現が可能です。
前回、ロシアの文豪ドストエフスキーの「罪と罰」について紹介しました。教養のひとつとして押さえておきたくても、重厚な作風から挫折した経験のあるひとも多いだろう作家の代表作ですが、現在上演中の、同じロシア文学の大家チェーホフのレア作「プラトーノフ」は、そんなロシア文学のイメージを少し変えてくれるかもしれません。4人の女性との愛に大騒ぎした結果身を滅ぼす青年役で、藤原竜也が主演しています。
元カノや妻を見下す未亡人
舞台は19世紀末のロシア、短い夏の始まりの時期。広大な土地を所有する美しい未亡人アンナ(高岡早紀)の屋敷にはたくさんのひとが集まってきます。その中のひとり、家柄と知性に恵まれた妻子ある教師のプラトーノフに、アンナは特別な思いを寄せていました。
アンナの義理の息子セルゲイは結婚したばかりで、皆に新妻ソフィヤ(比嘉愛未)を紹介します。しかし彼女は、プラトーノフが結婚前に交際していた恋人でした。プラトーノフの妻サーシャ(前田亜季)の弟で医者のニコライは大学生のマリヤ(中別府葵)に関心がありますが、これまで勉強しかしてこなかった彼女は、初めて出会ったタイプの男性であるプラトーノフが自身を愛していると思い込みます。
障害のある兄を椎名桔平、兄に苛立つ弟を藤原竜也が演じる『レインマン』のリアリティ
劇場へ足を運んだ観客と演じ手だけが共有することができる、その場限りのエンターテインメント、舞台。まったく同じものは二度とはないからこそ、時に舞台で…
「プラトーノフ」はチェーホフの死後に見つかった未発表戯曲が基になっており、彼がモスクワ大学医学部へ入学した前後の1878~1881年、20歳ごろに執筆されたといわれています。作品名は残されていませんでしたが、チェーホフの生誕100周年である1960年に「プラトーノフ」の題で初演。1976年には複数の短編と組み合わせて「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」の題で映画化されています。