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藤原竜也が薄汚れていてもチャーミングな理由

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 チェーホフは短編の名手として知られていますが、「プラトーノフ」は本来のまま上演すると9時間超のボリューム。そういった理由で、他作品に比べ上演機会の少ない作品なのですが、美貌の未亡人の領地が競売にかけられるという「桜の園」との共通点など、チェーホフが後に発表する名作のモチーフが散りばめられています。

 元カノのソフィヤに再会したプラトーノフは、若いころの感情が読みがえり、彼女とよりを戻します。純朴(でつまらないと見下している)な妻は許せても、新しい(かつ、退屈な人間だと見下している)ソフィヤの存在を許せない未亡人アンナはプラトーノフに「私に将来はない、今を生きたいの」「もうどうなってもいいの。あなたは私のものよ」とグイグイ迫り、妻サーシャが寝ている自宅の庭に事に及びそうに。信心深いサーシャは夫の浮気相手が人妻だと知り、絶望のあまり鉄道自殺を図ろうとし、大学生マリヤは「プラトーノフは教育者にふさわしくない」という脅迫状を送り付けてきます。

ひたすら残念な姿の藤原竜也

 チェーホフ作品の登場人物は、一言でいえばめんどうくさいひとたちですが、「プラトーノフ」に出てくる彼らは、誰もが自分勝手で愚かでありながらもどこか親しみも感じさせます。「プラトーノフ」にはシェイクスピアの「ハムレット」へのオマージュ描写もいくつか盛り込まれていますが、アンナが待つ庭へ戻るか迷うプラトーノフのセリフ「行くべきか行かざるべきか、それが問題だ」は、藤原自身が故蜷川幸雄演出で複数回「ハムレット」の主演を知っている観客からすれば、もはやコントともいえるような喜劇ぶり。

 やっていることはロクでもないのに、プラトーノフがこんなにも女性に惹きつけるのは、知識層で弁がたち、女性たちにとって「自分の人生を変えてくれそう」な刺激的な男性だから。しかし妻に出ていかれると、酒浸りで身だしなみも小汚く、恋人たちにも構わなくなります。

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ウェジー 2017.09.09

 藤原竜也は膨大なセリフも立て板に水で、もちろん外見もかっこいいのですが、秀逸だったのは妻に去られてからの姿でした。薄汚れた下着姿でいなくなった妻を呼ぶ姿は「情けない……」の一言であるにもかかわらず、そんな恰好でもチャーミングなのは、さすが藤原。ひたすら残念な下着姿なのに「このひとを完全に手にいれるまであと一歩!」感がほとばしっていました。

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