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芸能事務所の残業代不払いに是正勧告、過去にはタレント側の訴えも

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株式会社キューブ オフィシャルサイトより

 芸能事務所「キューブ」が、男性社員への残業代不払いについて渋谷労働基準監督署から是正勧告を受けた。同社は「いきものがかり」や藤木直人、生瀬勝久、「マナカナ」こと三倉茉奈と三倉佳奈らが所属。20代の男性社員を裁量のない業務に従事させていたにもかかわらず、裁量労働制を採っていたという。男性社員には、残業が月200時間を越えても残業代はほぼ支払われていなかった。

 裁量労働制とは、実際の労働時間にかかわらず一定時間を働いたとみなして賃金を支払うことをいう。仕事の進め方や時間配分は労働者に一任されるため、とくに労働時間が不規則になりがちな業界などで普及している。一方で、いくら働いても賃金が一定のため長時間労働を助長しやすかったり、経営者側が悪用する懸念があったりと、問題も指摘されてきた。

 昨今、多様な働き方のひとつとして裁量労働制の普及が推し進められているが、こうした抜け穴をどのように防ぐか。不当な労働の改善は、働き方改革を進めるうえで大きな課題だが、芸能界はタレントも“ブラック”な働き方で疲弊していると考えられ、抜本的な改革が必要かもしれない。

 芸能界には華やかな一面もあるが、その働き方は不規則かつ休日出勤や長時間労働も当たり前、という不文律が存在している。ネット掲示板では「残業は月240時間以上。毎日のように徹夜が続く」「休めないのに給料も少ないし、好きじゃないと続けてられない」という実体験の投稿も多い。

 それでも「好きで続けている」人々にとっては、労働時間を規制されたらコンテンツ制作が追いつかないという事情がある。テレビでは24時間多くのチャンネルが新規コンテンツを投入し、面白さを競っている。テレビにしろ広告にしろ、日々、大量のコンテンツが制作され、消費されており、そのサイクルは非常に速い。

タレントは「忙しさがステータス」

 また、タレントは「忙しさがステータス」という職業だ。「仕事がない」ことはつまり「需要がない」「人気がない」「お金がない」こととイコールであり、寝る間もないほど多くのオファーをタレント本人も歓迎している場合がほとんどだろう。

 昨年5月の『情熱大陸』(TBS系)に出演した藤田ニコルは、モデル業に加えてバラエティ番組の撮影、セルフプロデュースしたブランド「ニコロン(NiCORON)」のプロデュース業などを並行させており、いかにも多忙だった。休みは2カ月間に2回だけというハードスケジュールだ。しかし、マネージャーが詰め込んだスケジュールには「仮」の仕事が多く、全てなくなる可能性すらあるという。この「仮」がすべて「確定」になった結果、休みがなくなるわけだが、キャンセルされるよりよほどいいのだろう。

 番組スタッフの「どういう風に未来を見てる?」という質問に対して、藤田は「今ある仕事は全部ちゃんとやりたいし、でもそんなのいつ終わるかわからないじゃないですか。願望は言えるけどさ、ぶっちゃけわからないじゃないですか。いきなり必要とされなくなったら終わりだし、何か自分が悪いことしちゃったら終わりだし。先見すぎても、何か、つらいじゃないけど……わかんないから、だったら今楽しんで、必要とされる分だけ頑張りたいなって感じ」と、切実な心境を吐露。その姿は、悲壮感すら漂わせていた。

 藤田は自分の立ち位置や求められているものをよく理解しており、そのうえで現状を肯定しているようだった。そのストイックな姿は人間として尊敬できるものだが、とはいえ冷静に考えれば、まだ20歳(当時)の藤田を、周囲の大人たちはしっかりケアしているのだろうか。本人がいくら頑張りたいと言っても、適度な休息を取らせることは必要だろう。藤田をイチ労働者として捉えれば、その働き方は異常だ。

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