高齢者のシェアハウスは孤独死を救うか? 老人ホームと何が違うのか

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サ高住の問題

 利用者側からみたデメリットのほか、サ高住をめぐってはいくつかの問題も出てきている。

 参入が難しくないため、安易な計画のもとに開業したサ高住の廃業がこれまでに260件あったというニュースが2017年に報道された。

 業者にとって、サ高住の建設には大きなメリットがある。サ高住は住宅の分類になるため在宅介護に該当し、条件を満たせば上限1000万円の補助金が出る。これは、施設にあたる有料老人ホームには該当しない制度である。また所得税や法人税の割増償却、不動産取得税の軽減措置、固定資産税の減額などといった税制優遇もある。そのため、不動産会社などが儲け主義で参入したが、需要のないエリアに供給過多となって廃業に至ったと考えられている。

 また、本来対象としていた自立した人や要介護レベルが低い人が入居を断られ、要介護レベルの高い人が入居しているという問題も生じている。要介護レベルが高く、有料老人ホームに入居する経済的な余裕がない人は、低所得者を優遇する仕組みがある公的施設の特養老人ホーム(特養)が受け入れるべき対象である。しかし特養には全国に30万人の待機者がいてすぐに入ることができない状況のため、やむなくサ高住を利用しているというわけだ。

 なぜ要介護レベルが高い人を優先して入居させるかというと、過剰な介護サービスを提供することで介護報酬を儲けられるからだという。このビジネスモデルにより、月8万円以下といった家賃が安い物件の5割は、要介護レベルが高い利用者となっている実態がある。これにより、本来介護施設ではないサ高住の公費が特養より大きくなるという懸念も出てきている。

サ高住入居者同士のコミュニケーション

 いろいろと気になる問題があるものの、サ高住の持つ、高齢者向けシェアハウスとしての機能を考えてみたい。日本人にはシェアハウスのような形態は合わないし、特に頑固になりがちな高齢者ならトラブルが増えそうというネット民のコメントもあるが、実際どうなのだろうか。

 成功モデルとしてメディアに取り上げられることの多い、「銀木犀(ぎんもくせい)浦安」は特に開かれたサ高住である。認知症の入居者が多いが、鍵の施錠はせず自由度が高い。入居者を患者扱いすることなく、自分のできることは自分でというスタンスが特徴だ。居心地のよい空間と自立を促す方針のせいか、要介護レベルが下がる人もよく見られるのだという。

 ここでは、住宅主導のイベント、入居者主催の飲み会など、さまざまなイベントが行われている。男性の場合は特に、誰もが最初から他の入居者と仲良くなるわけではないようだが、イベントをきっかけに周囲と馴染むようになった人もいるようだ。

 また、地域住民に開かれたフリースペースや食堂、駄菓子屋があるため、1日200人以上もの来館者があるという。入居者のなかには、駄菓子屋の店番をして子どもたちと交流することで、さびしさを感じなくなったという人もいる。

 銀木犀に限らず、入居者のコミュニケーションの機会を提供するところは多い。入居前から入居希望者同士の交流会を設けているところもある。そのようなサ高住で暮らすなかで、家族ではなく、同世代で暮らす面白さに気づく人も少なくないようだ。

 ところで筆者は、イギリスの富裕層を対象とした高齢者向け住宅を訪問したことがある。そこは、ケアや各種サービスだけでなく、分譲か賃貸かが自由に選択できる仕組みになっている。リノリウム敷きの広い廊下こそ病院のようだったが、家の玄関から中に入ると、完全に個人の空間が広がっていた。ベランダには植物が飾られ、リビングは広い。ベッドルーム、キッチンや風呂、トイレもある。何度か訪れる機会があったが、住民同士仲が良いことが印象的だった。住民は訪問者にも好意的な態度で接してくれた。これらは、個人スペースの充実、プライバシーの確保がまずあるせいではないかと想像される。

 一方、日本の祖母が入る有料老人ホームと特養をそれぞれ訪ねたこともある。どちらの施設も要介護レベルが高い入居者が多く、食事の時間で皆が勢ぞろいする時も、入居者同士は会話もせず黙々と食べていた。独り言は言うが、会話にならない。要介護レベルが上がると、入居者同士の交流というものはあまり求められないように思えた。

利用にあたって

 サ高住は開発の途上にあり、そのあり方はどんどん変容していっている。値段はさまざま、サービスもさまざま、質も玉石混淆である。入居を検討する場合は、その施設が廃業してしまう可能性を確認するために住宅の入居率を調べるとともに、サービスレベルなど、口コミ情報をできる限り収集し、よくよく見極めて選ぶ必要があるだろう。

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