吉本芸人の「シモ」トラブルも徹底的に調査し解決させた元よしもとの謝罪マン・竹中功が見た、純烈・謝罪会見

ビジネス 2019.02.23 09:05

「Getty Images」より

 「謝罪」をせねばならなくなったということは、すなわち「事件・事故」が起こってしまったという現実の前に立っていることにほかならない。

 「事件・事故」は、悪意があろうがなかろうが、不意の出来事であろうがなかろうが、相手の心の針がマイナスに振れることである。そして、それによって自分の心の針もマイナスに振れることである。

 その原因に気づき、反省し、再発防止を宣言することのすべてがセットになって「謝罪」といえる。

 前回、ここでは「謝罪を成功に導くステップ」として6つを挙げた。これらの実行の順番を間違ってはいけないこと。またのんびりやっているヒマがないことも忘れてはならない。

1:命や人体に関わることがないかを確認

2:経緯・事態を時系列で整理して完全に把握する

3:「謝罪シナリオ」を書く

4:原因を究明し、再発防止策をまとめる

5:直接の被害者に、直接謝罪に行く

6:必要であれば、対外的に発表する

 今回はその中で2つ目に挙げた「経緯・事態を時系列で整理して完全に把握する」ことを詳しく話そう。

「情報」と「データ」の違い

 ここで重要なのは刑事か、私立探偵か、弁護士か、はたまた週刊誌や新聞社の記者なのかと言わしめるほど、「現状の把握」のための調査の時間を惜しまないことだ。

 まずほしいものは、属人的な「情報」などではなく、起こってしまった「事件・事故」の現状という非属人的な「データ」である。徹底的に正しい「データ」がほしいのだ。

 この「情報」と「データ」の違いを今一度話しておこう。

 「情報」とは、先に書いたように「属人的」なものなのだ。たとえば、私がクルマを運転している最中によそ見をして、ほかのクルマと接触事故を起こしたとしよう。「家族のことで考えごとをしていたから」とか「明日締切の原稿が仕上がっていない」といったことは「属人的な理由」と呼べる。これらは、人によって違うが当然だ。だが、「明日のデートのことでワクワクしていて信号を見落とした」と言おうが、「悩みごとがあって……」と言おうが、事故は事故なのである。

 現実に問われるのは、その時の精神状態ではなく、「信号無視」という事実である。「情報」をその事故と関係づけることは不要である。

 「属人」とは、その字のごとく、業務や状況が特定の人物に依存してしまうことで、ビジネス上ではメリットもデメリットもあるといわれている。しかし、「事件・事故」などの有事の際、処理する担当者にすれば、気分や精神的な側面を知ること以前に、時間軸に則った「真実」がほしいのだ。

 「現状の把握」から見ると、その因果関係が必要なのではなく、「何時何分、どこの交差点で、どちら向けに時速何キロで走っていて、一旦停止を怠った。それによって接触事故を起こしてしまった」というのが、その事実のすべてである。もちろんそこに「酒気帯びも確認されず、不注意であった」というものを加えるとしても、重要なのは「非属人的」な「データ」である。

 問題は「一旦停止義務を怠った」であって、悩みごと、仕上がっていない原稿、デートの予定などが気になったかどうかは何の意味もない。

 取り返しのつかない、そして悪意ある犯罪を犯したのなら、動機や原因も重要になるが、ここは謝罪や再発防止のために「現状」をできる限り正確に把握することが必要だ。

 この際の聞き取りついて先ほど「刑事か探偵か記者か」と書いたが、対象者が社内であっても家族であっても、容赦なく、事実に関するデータの収集に全力を尽くさなければならない。

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竹中功

2019.2.23 09:05

モダン・ボーイズCOO/作家。同志社大学法学部卒、同志社大学大学院修了。1981年吉本興業入社後、宣伝広報室を設立。「マンスリーよしもと」初代編集長。吉本総合芸能学院(よしもとNSC)の開校。コンプライアンス・リスク管理委員、よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役、よしもとアドミニストレーション代表取締役などを経て、2015年7月退社。主な著書に『謝罪力』(日経BP社)『よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術』(日経BP社)『他人(ひと)も自分も自然に動き出す 最高の「共感力」』(日本実業出版社)ほか多数。

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