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男性医師わいせつ無罪で被害者バッシング 問うべきは科捜研および検察の杜撰さ

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「Getty Images」より

 男性医師が手術直後の女性患者にわいせつな行為を行ったとして、準強制わいせつ罪に問われていた事件で、東京地裁は今月20日、男性医師に無罪判決を言い渡した。

 一貫して無罪を主張していた男性医師は、判決後の記者会見で「ほっとしている」と現在の心境を明かしたが、「100日以上拘束されて、社会的信用や職を失った」とも語った。警察の捜査に非科学的な手法があったこと、警察からの一方的な情報で事件が報じられ、インターネット上には悪意ある書き込みがなされ、自分も周囲の人間も大きく傷ついたという。

 男性医師は2016年5月10日、自身が勤務する東京都足立区の病院において、右乳腺腫瘍の摘出手術を受けた直後の女性患者(以下、Aさん)に対して、胸を舐めるなどのわいせつな行為をした、として起訴されていた。全身麻酔から覚醒途中にあり、意識はあるが身動きが取れず抵抗もできなかったというAさんは、被害から数十分後、会社の上司にLINEで連絡。上司の通報により警察が駆け付け、Aさんの左胸付近から微物を採取。捜査を経て、男性医師が逮捕されたのは同年8月25日だった。

 「乳腺外科医の男性医師が患者にわいせつ行為をした」として、この逮捕はすぐストレートニュースとして報じられた。だが逮捕された当日、男性医師が勤務する病院は、病院HPに男性医師逮捕は不当であると抗議文を掲載し、以降も無罪を証明するために働きかけてきた。

 検察側はAさんの胸から採取した付着物から、男性医師のDNAが含まれる唾液や口腔内細胞が検出されたが、その量は「会話による飛沫などでは考えられないほど多い」と主張。Aさんの証言も信用性が高いとして、男性医師に懲役3年を求刑した。

 弁護側は、Aさんは全身麻酔による「せん妄」状態にあり、性的幻覚があった可能性が高いと主張。科捜研のDNA鑑定には不手際があり科学的信頼性がないと指摘し、さらに、当時Aさんがいた4人部屋の病室は満床で、看護師や他の患者および見舞客の出入りもあり、ベッドの高さなどからも、男性医師の犯行は不可能だったと主張していた。

 そして東京地裁は20日、Aさんがせん妄状態だった可能性があること、Aさんの胸から検出された唾液は触診や会話中に付着した可能性を否定できず、DNA鑑定の信用性に疑いがあることなどから、無罪を言い渡した。Aさんは控訴を望んでいるという。

 この事件を巡っては、事件そのものとは別に複数の問題が見えた。まず、男性医師や勤務先の病院ばかりか、他の医療関係者からも「冤罪」の可能性を指摘する声が大きかったが、インターネット上では男性医師を誹謗中傷する書き込みもあり、男性医師が名誉を傷つけられたことは確かだ。何らかの事件で容疑者が逮捕された時点で、容疑者の実名が報じられることは多く、たとえ実名が伏せられていてもネット上で個人を特定し、あらゆる情報を拡散させようという動きが起こる。

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