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黒人を「チンパンジー」と呼ぶ日本人~黒人差別は日本も無縁ではない

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「Getty Images」より

 アメリカでは毎年2月は「黒人史月間」であり、全米各地で黒人史にまつわるイベントが開催される。特に今年はアフリカから黒人が初めて北米に連れてこられてからちょうど400年目に当たるため、その史実にフォーカスしたイベントや報道もおこなわれている。

 アメリカ黒人史は音楽、ダンス、ファッション、料理、言語、アートを含む豊かな文化の歴史でもあるが、やはり奴隷史であり、人種差別と抵抗の歴史と言わざるを得ない。黒人差別は現在もまだ色濃く残り、アメリカの大きな社会問題のひとつだ。ブラックフェイス(黒塗り)、ホワイトウォッシュ、サル呼ばわりが糾弾されるのもそれが理由だ。

 近年、こうした黒人差別問題は日本にも波及している。ももいろクローバーZとラッツ&スターの黒塗り(2015)、ダウンタウン浜田雅功の黒塗り(2017)が紛糾した。また、日本人とアフリカン・アメリカンのミックスである宮本エリアナさんがミス・ユニバースに選ばれた際には「日本人らしくない」とバッシングされ(2015)、つい先月には日清のCMでの大坂なおみ選手のホワイトウォッシュが大問題となった。そして今月、マラソン大会のボランティア通訳者が黒人選手を「原始人」「チンパンジー」と呼ぶ出来事があった。

黒人を「かわいいチンパンジー」と呼ぶ日本人の人種感覚

 今月3日に大分県で開催された別府大分毎日マラソン大会で有償ボランティア通訳をつとめた50代の女性が、アフリカからの招待選手について個人ブログに以下のように記した。

「最初は、発音が聞き取れず悪戦苦闘でした。チンパンジーや古代の原始人とコミュニケーションしている感覚でした」
「最初はシャイだったチンパンジー達も、だんだんと心を開いてくれました」
「かわいいチンパンジー達」

 批判を受けて女性は書き込みを削除し、ブログも閉鎖。マラソン大会事務局が謝罪をおこなう事態となった。

 この件について、楽天のオコエ瑠偉外野手は以下のツイートを行なっている。

「少なからずいるんだよ。俺らは我慢するだけ」

 オコエ選手の父親はナイジェリア人だ。

 こうした出来事が起こるたびに黒人とその家族、周囲の人々は深く傷付くが、黒人は日本ではあまりにも少数派であるため、声すら上げられない。オコエ選手の短いツイートの言葉の端々にその無念が滲み出ている。

 日本は、本人と両親の国籍・出生地・居住地・言語・人種が全て合致している場合に日本人とみなす。合致しない日本人の存在を忘れ、外国籍の長期居住者(移民)も意識していない。ゆえに日本語で黒人を「原始人」「チンパンジー」と記述しても、まさかそれを当の黒人が読むとは想定できない。

 そもそも圧倒的多数の日本人にとって黒人は「ガイジン」であり、その存在だけでなく、背景や歴史への関心も薄い。奴隷制があったことを知ってはいても、第三者がその過酷さ、さらに重要な点として、負の歴史が現在の黒人の生活環境にも大きな影響を及ぼしていることに気付かない。日本人が黒人を「原始人」「チンパンジー」と呼ぶ行為は、まさに過去の歴史に操られてのことなのだが、当人にその自覚は一切なかった。ブラックフェイスやホワイトウォッシュも意図的な差別行為のこともあるが、多くはマジョリティ側の無関心により発生する。こうした現象の根本を理解するためにも、まずは北米における黒人の歴史を知る必要がある(*)。

*今回の記事ではアメリカ合衆国の黒人の歴史を描く。アフリカ、カリブ海、中南米の黒人については別の機会に譲る

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