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成城石井が展開するハイレベルなフードカートに行列、スーパーマーケットが取り込む新需要とは

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「成城石井 ゲートシティ大崎店」プレスリリース

 2月7日、JR大崎駅に直結するオフィスビル「大崎ゲートシティ」の地階にフードカートが登場し、早くも人気を集めている。

 フードカートは、米国生まれの食べ物を提供する移動屋台。日本でもオフィス街の広場や駐車場などで見かけるようになった。

 フードカートで提供されるストリートフードは、A5ランクの牛肉を使用した煮込み丼、オール手づくりのタコス、カマドで炊いた釜飯など、味や素材にこだわったものも多い。昼時は人気の店に順番待ちの行列ができることも珍しくない。さらに、フードカートが一堂に会するイベントも開催されるなど、注目を集めている。 

 大崎ゲートシティのフードカートは、厳密にいうとフードカート風スタンド。スーパーマーケットを新たに出店した成城石井が売場に設けたものだ。同社としては初めての取り組みで、幹部候補生が米国に研修に行って現地で視察したものをもとに考案し、具現化された。

なぜ、あえてフードカートなのか

 売場の棚に並べて売れば良いのではと思うが、なぜスーパーマーケットにフードカートなのか。成城石井は、できたてをすぐに食べられるイメージが見た目にも伝わるように、フードカートを模したスタンドにしたと説明する。フードカートで提供することで、注目度が高まる効果も期待できる。

 スタンドには車輪が装備され、飾りつけもされ、一見するとフードカートそのものだ。キッチンも備えており、スタッフが調理したデリご飯やスイーツ、ドリンクを販売する。ただし、あらかじめ同社のセントラルキッチンで半調理したものに盛り付けや加温などの最終加工を施し、オーダーを受けてから1分程度で提供するクイックさも売り物にしている。デリご飯はランチ需要に対応し、11時から14時まで、スイーツは11時から20時まで販売する。

 セントラルキッチンには熟練したプロの調理人がおり、成城石井が運営するワインバー「Le Bar a Vin 52(ル バーラ ヴァン サンカン ドゥ)」のノウハウを活用していることから、メニューのレベルは高い。

ヘルシーなエスニックやロカボが豊富に揃う

 デリご飯は話題のエスニックやロカボを取り入れ、約12種類の定番メニューを季節に合わせて用意、週替わりでスペシャルメニュー1品も投入し、常時5品程度を取り扱う。

 その中のひとつが「鹿児島県赤鶏さつまとパクチーのカオマンガイ」(799円)。「カオマンガイ」は、ご飯の上に蒸し鶏を乗せた、東南アジアなどで親しまれている屋台料理だ。米はガラスープ、鶏油、生姜で炊き上げたタイ米、ソースには、シラチャソースやシーユーダム、ナンプラーといった本格的なエスニック調味料を使用。仙台味噌を加えることでコクを出し、本格的かつ日本人好みの味わいに仕上げている。

 「成城石井自家製 ローストビーフ丼」(799円)は、1食当たりの糖質量を40gに抑えたロカボアイテム。セントラルキッチンで焼成したローストビーフを店内で1枚ずつスライスして盛り付けてある。

 「成城石井自家製のローストビーフとパクチーのバインミーサンド」は599円。ドッグパンはフランス産全粒粉を配合し、ゲランドの塩とココナッツシュガーを使用。バターベトナムのサンドイッチ「バインミー」を成城石井流にアレンジしている。

 スイーツは、成城石井牛乳を使ったソフトクリーム250円のほかに、「モーモーチャーチャーソフトクリームのせ」499円もある。「モーモーチャーチャー」は「ごちゃまぜ」の意味で、マレーシアなどで親しまれているデザート。ココナッツブラマンジェとアングレーズソースをベースとしたムースの上に、ソフトクリームを乗せている。

 「タピオカ黒糖ミルクティ」299円と、ドリンクでもアジアンテーストを打ち出す。セルフコーヒーマシンでは、「コーヒー」139円、「エスプレッソ」139円、「辻利宇治抹茶ラテ」167円、「ヴァンホーテンリッチテイストココア」139円などを用意している。

レストランとショッピングモールを融合した「グローサラント」の展開

 成城石井はこれに先立ち、ステーキやパスタ、ピッッアなど本格的なフードメニューとワインなどを提供するレストランを併設した「トリエ調布店」を2017年9月にオープン。昨年10月には、「アトレ新浦安店」に、デリの販売とフードメニューを用意しイートインスペースを備えた「SEIJO ISHI STYLE (セイジョーイシイスタイル)」を新たに設けた。

 こうした取り組みは、レストランとショッピングモールの融合「グローサラント」と呼ばれる米国発祥の店舗スタイルだ。今回はオフィスビル出店ということでランチ需要にフォーカスし、フードカート風スタンドとの組み合わせになった。成城石井はこれからもグローサラントを展開していく予定で、新たなレストラン機能の登場も予想される。

 グローサラントは、ここ1〜2年で日本にも広がりつつあり、JR東京駅の「イータリーグランスタ丸の内店」、JR大阪駅の阪急オアシスが中心となっている「ルクアフードホール」などが注目されている。スーパーのイオンリテールも、ステーキ、海鮮丼、パスタ、おにぎり、サンドイッチなどの専門店を開発して食品売り場に導入したほか、デリカも拡充し、イートインスペースも設けてレストラン機能を強化している。

 つまり、スーパーマーケットは食品を買う場所から、その場で食べる「即食」スペースに変化することで、新たな需要を取り込もうとしているのだ。ただ、こうした取り組みが可能な店舗は立地が限られるうえに、開発力やノウハウも必要なことから展開できる企業も限られるとあって、急速に広がるほどの勢いは見せていない。

 しかし、近所のスーパーマーケットでも、ベーカリーやデリカなど売り場の商品を飲食できるイートインスペースがあるところが増えてきていて、広い意味でグローサラント化が進んでいるといえる。有職主婦や単身者・少人数世帯の増加により、家庭で調理する機会も減少傾向にある。グローサラントはこうした変化に対応し、即食という新たな需要を取り込もうとするものだ。  

 フードホールでは、売場で購入した商品でBBQを楽しめるなどユニークなものも登場している。グローサラント化は、利用者が新たな食を体験できるものとして今後も期待が高まる。近い将来、日本でもスーパーマーケットで食事をするのが当たり前の時代が来るかもしれない。

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