
(左)カジサック(公式YouTubeチャンネルより)/(右)宇野常寛(公式Instagramより)
批評家の宇野常寛氏が、カジサックこと、お笑いコンビ「キングコング」の梶原雄太氏から失礼な対応を受けたとしてイベントを途中退場したことが騒動となった。宇野氏は、本人が納得していないものは「いじり」ではなく「いじめ」だとして、いわゆるテレビのバラエティ番組的なノリを強く批判している。
ネット上では宇野氏の行動を支持する声が多いようだが、一方で宇野氏に対しては「イベントのノリに合わせるのは当然」「仕事を放棄している」といった批判も寄せられている。騒動自体は、主催者が運営に不手際があったとして、宇野氏と梶原氏双方に謝罪することで、とりあえずは着地となったが、今回の騒動は日本社会の息苦しい雰囲気を如実に反映しているといってよい。
「いじり」と「いじめ」の境界線は?
トラブルが起こったのは、2月2日に開催された「ホリエモン万博」というイベントの中で行われたチャンバラ合戦大運動会である。宇野氏は当初このイベントにトークショーのゲストとして招待されていたが、その後、なぜかチャンバラ合戦に内容が変更となり、さらに直前になってカジサック氏の参加が決まったという。
当初、宇野氏はカジサック氏からの絡みもそれなりにかわしていたが、カジサック氏からの執拗な絡みやいじりに立腹し、イベントを途中退場。その後、本人が納得しない「いじり」は「いじめ」にすぎないとして抗議のツイートを行った。
宇野氏によれば、会場でカジサック氏は「みんなが面白くなるためにした」と形式的に謝罪したとのことだが、その後、事務所のよしもとクリエイティブ・エージェンシーを通じて「芸人として当たり前のことをしただけだから特に謝罪しない」というコメントを宇野氏に送付。宇野氏がこれに激怒したことで、論争がヒートアップした。
ネット上では、賛否両論が飛び交ったが、全体的には「いじり」を誰かに押しつけるテレビ的な風潮を批判する声の方が大きいようである。
テレビ番組はもちろんのこと、現実社会においても、「その場の空気を優先させ、他人からからかわれてもヘラヘラと笑っていなければならない」という日本社会の風潮はかなり根強いものがある。だからこそ、テレビ番組もこうしたトーンの番組を量産しているともいえる。
今回のトラブルが、日本社会の現実を反映したものであることは、宇野氏に対して寄せられている批判の内容を見るとさらに明確になる。