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沖縄基地問題に直木賞作家「沖縄を“腫れ物”にすることこそが差別」

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真藤順丈『宝島』(講談社)

 2月24日、米軍普天間基地の名護市辺野古移設に伴う埋め立てについての賛否を問う沖縄県民投票が行われる。

 県民投票に法的拘束力はなく、日本政府は結果に関わらず工事を進める方針を打ち出している。沖縄に住む人々の民意を無視する安倍政権の強引な姿勢と対米従属の姿勢は、このまま変わらないのだろうか。

 2月21日に行われた第160回芥川賞・直木賞の贈呈式で直木賞の受賞者である真藤順丈氏は、県民投票についてこのようにスピーチをしている。

「賛成か反対のいずれかに明確な声を上げてもらいたい。もし、示された民意と正反対の施策が進められてしまったとしても、(県民投票の)以前と以後では違う世界が待っていると思っている」

沖縄県民がアメリカ・日本双方に抱く怒り

 直木賞を受賞した真藤順丈氏の小説『宝島』(講談社)は、1952年から1972年までの太平洋戦争後アメリカ占領下の沖縄を舞台にしている。主人公は過酷な生活を生き抜くために米軍基地に侵入して物資を盗む「戦果アギヤー」と呼ばれた少年たちである。彼らは戦後の混乱期に実在した人たちだ。

 主人公たちは沖縄戦の地獄ような環境を生き抜いたが、物語ではしばしば、九死に一生を得た沖縄戦の体験がフラッシュバックするさまが繰り返し描かれる。戦争体験が沖縄の人々に対していかに深い傷を負わせたか、痛感せざるを得ない。

 しかし、沖縄の戦争は1945年8月15日の後も終わらなかった。『宝島』のなかには、嘉手納幼女殺人事件などの米軍兵士による性的暴行や殺人事件、米軍機が小学校に墜落して多くの死傷者を出した宮森小学校米軍機墜落事故といった実際の事件も描かれ、そこに主人公たちも巻き込まれていく。

 戦争が終わったはずなのに、まだ戦争に巻き込まれて傷つかなくてはならない──沖縄県県民の怒りと悲しみは、『宝島』ではこのように表現されている。

<「おれたちの島じゃ戦争は終わっとらん」とオンちゃんは言った。「あの日、アメリカーがぞろぞろと乗り込んできて、あちこちに星条旗をおっ立てて、そのまま五年も十年も居座ってるやあらんね。おやじ(スー)やおふくろ(アンマー)の骨が埋まる土地を荒らして、ちゃっさん基地を建てくさって。だからわりを食った島民が報われるような、この島が負った重荷をチャラにできるような、そういうでっかい“戦果”をつかまなくちゃならん」>

 ただ、沖縄の人たちの怒りの矛先はアメリカだけに向いているわけではない。沖縄の土地とそこに住む人々を生け贄にして、安寧とした生活を得ようとする日本の本土にも向いている。

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