社会

グリコ子育てアプリが採用した「男性脳」「女性脳」というジェンダーステレオタイプ

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江崎グリコ公式サイトより

 江崎グリコがリリースした、妊娠期から使える無料の子育てアプリ「こぺ」がTwitterで波紋を呼んでいる。「こぺ」は、今月6日に江崎グリコが発表した「Co育てPROJECT(こそだてプロジェクト)」の取り組みのひとつで、<夫婦間の意識のすれ違いを認識し解消に導くコミュニケーションツール>として開発された。

 子育てに限らず<夫婦間の意識のすれ違い>が起こることはあるだろうが、「こぺ」では、「男性脳」「女性脳」を根拠としたアドバイスが「お役立ち記事」として多く掲載されている。これが「ステレオタイプを助長している」「性別の問題ではない」「男女の対立を煽る」との批判につながっている。

<子育てパパとママのすれちがいのストレスを減らすには、まず、パパとママの脳のちがいを知ることから。脳を装置として見立ててみると、男性脳と女性脳では回路のかたちや信号の種類がちがうから、当然、おなじ入力に対しての出力も変わってくるよ。それなのに、パートナーを自分と同じように扱おうとするから、ストレスを感じてしまう>

<脳には性差がある。それが、右左脳が連携がよく、察することが得意な女性脳と、連携が頻繁でなく、空間認知力に優れた男性脳。女性の多くは女性脳の持ち主で、多くの男性は男性脳を搭載しているんだ>とある。

 「男性脳」「女性脳」を前提に、夫(男性)向けのアドバイスと、妻(女性)向けアドバイスが展開されている。

 たとえば、「夫が妻に相談されて、アドバイスしたら逆ギレされた」というケースについて、夫へのアドバイスはこうなる。

<女性脳は何より共感を求めているの。話を聞いてくれて、共感さえしてくれればOKなの。「そりゃあ、ひどいね」「きみは、正しい」「よくわかる、その気持ち」と共感の相槌を打ちながらひとしきり話を聞いてあげるのが鉄則。くれぐれも「相手のいうことにも一理ある」とか「きみの言い方も悪いんじゃないの」なんて公平な評価をしちゃいけないよ。「聞いてほしいだけなのに、ことごとく私を否定する」って逆ギレされちゃうから。女性がパートナーに期待しているのは、えこ贔屓して「よしよし」してくれることなんだからね!!頼むよ!>。

 一方、「妻が夫に相談したら、正論しか返ってこなくてムカついた」というケースでは、妻にこうアドバイス。

<男性脳は、相談を受けると、つい、最短時間で問題解決を図ろうとする脳。しかも、できるだけ感情を抜きにして! 長らく「狩り」のような命がけの共同作業をしてきた性だから、主観を抜きに普遍の答えを出すことに慣れているんだ。それって、女性とはまったく違う仕組み。なにより「共感」が欲しい女性脳は、混乱してしまうし腹がたつよね~。 でも、男性のもたらす「感情を排除した、公正な対処法」が、ときにとても有用であるのも事実だよ。ムカつきながらも従ってみると、トラブルが氷解したりして!>

そのほか、<女性は「察してほしい」生き物。不満を口にするのではなく、「不機嫌」という形で表現する><生まれつき男はニブい。まずそれを知るべし。目の前のちょっとした変化や遠回しな発言には気づきにくいのが男性脳。女性が「態度であからさまな意思表示」していても、男性脳にはわからないってこと>など、脳の違いがすべての根拠となっている。

 かつてブームにもなっていた「男性脳」「女性脳」だが、「脳の性差」は存在しないという研究結果が発表され、科学的根拠はないことがわかっている。「男性脳」「女性脳」はジェンダーステレオタイプにすぎない。

 このジェンダーステレオタイプに基づいて、「男は~」「女は~」と語る表現は、至るところにあふれている。男は理論的で女は感情的、男は狩猟本能があり女は母性本能がある、男はニブくて女は鋭い、男は解決策を求めるが女は共感を求めているだけ……など典型的なものがいくつもある。しかし男も女も「人それぞれ」で、こうした分け方に何の意味もない。

 「ステレオタイプ」といえば、先日、生活雑貨店「ロフト」のバレンタインのプロモーション広告も、テンプレ的に“女性は所詮こういうもの”と主張し、「女性は嫉妬深い」「女性は足の引っ張り合いをする」「女性の友情は存在しない」と型にはめていた。やはりこれも問題含みの表現であるため、批判を受け撤回している。

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