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多様性の志向は表現の幅を広げる。日本のゲーム業界が縛られている古い規範/今井晋さんインタビュー【後編】

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「Getty Images」より

「ゲームの世界にも性差別の問題があるのでは」という疑問から、ゲーム・エンターテイメントサイト「IGN JAPAN」の副編集長・今井晋さんに、ゲーム業界での差別問題についてインタビューを行っている本企画。前編では、「多様性」を志向する欧米のゲーム業界と旧態依然としたゲーマーとの対立から生じた「ゲーマーゲート事件」や、なぜ欧米のゲーム業界が「多様性」を志向するようになったのかについてお話を伺った。その中で今井さんは、日本のゲーム業界は多様性をほとんど意識していない、と予想をされていた。なぜ日本のゲーム業界は「多様性」を志向していないのか、その理由についてお話を伺った。

チャットでの差別に対する対応

――日本でもようやく注目されてきているe-sportsでは、女性限定、男性限定の大会も開かれていますよね。過去には「なぜ性別で分けるのか」という批判もありました。

今井:それについてはフェミニズム側でも意見がわかれているのでなんとも言えないのですが、e-sportsの中で、いかに女性が参加していくかという議論はされていますね。

――ゲーム全体の性別比に比べると、e-sportsは男性プレイヤーの数が圧倒的に多いと思います。オンラインの対戦ゲームで、世界的に人気のある「League of Legends」でも、女性プレイヤーはほとんどみかけないような気がします。女性プレイヤーが一人いるプロチームも稀ですよね。

今井:「League of Legends」のような超人気ゲームになると女性プレイヤーで勝てる人はほぼいないですね。

――それは能力の問題なんでしょうか?

今井:こればかりは時間が経たないとわからないことです。将棋の棋士のような世界なのかもしれないし、単に女性が今まで参戦していなかったというだけなのかもしれない。ただ、2018年・平昌オリンピックで公認されたe-sportsの大会では、女性のプレイヤーが優勝しています。ですから、競技による、という部分が大きいのかもしれません。

――オンラインゲーム、特に協力したり対戦したりするゲームだと、ボイスチャットやテキストチャットを使った他のプレイヤーとの交流も行われます。その中では、差別的、侮蔑的な言葉を耳にすることも少なくありません。こうした問題に対して、ゲームタイトルを作った会社、ソニーや任天堂などが対応したり、あるいは問題発言がきっかけで裁判になった例は過去にあるんでしょうか。

今井:少なくとも僕が聞く限りはありませんね。

――脅迫もありますよね。海外のプレイヤーですが、家に銃弾を撃ち込まれたことを報告しているYouTubeを見たこともあります。

今井:ありますね。対戦相手を通報して、SWATを突入させた例もあります。こうした嫌がらせって昔からあって、オンラインゲームのトラブルは珍しいことじゃないんです。ゲーム運営側が、こうした問題をいかに減らすかというのは重要なテーマになっています。

――オフラインで問題が起きれば警察なり司法なりの対応も可能だけれど、オンライン上の問題発言はなかなか難しい?

今井:SNSと変わらないんですよ。どこまで取り締まれるかは微妙で。もちろんプラットフォームやゲームを運営している会社も対応はしています。例えばテキストチャットで差別用語はそもそも使えないようになっていますね。

――伏せ字になっていたり、あるいはそもそも該当するワードが含まれていると表示されなかったりしますね。

今井:そのくらいは機械的にできますよね。ただ差別用語とか罵倒って、極めて巧妙なんです。もともとそういう意味の言葉じゃなくても侮蔑的に使えるじゃないですか。「身体障害者」という言葉は差別用語じゃないけれど、差別的に使うこともできてしまう。

これらに対応する方法として、自治的な方法があります。要するに、誰かが差別的な言動をしているのを見た人が通報をする。周りの人が、通報された人の言動が不適切かどうか投票などを行い、問題があるという結論に至った場合は、その人のアカウントをBANしたり、何らかのペナルティを課す、というものです。「League of Legends」は、ゲーム内の健全性を保つことをかなり意識していて、それこそ「オカマ」みたいな言葉は一発でアウトになりました。

――プレイヤーのリテラシーが問われる方法ですね。あとボイスチャットの場合はそうした対応がかなり難しいですよね。すべての記録を残すわけにも行きませんし。

今井:そうですね。残そうと思えば残せるかもしれませんが、検証するのは大変ですよね。AIが音声認識をして、問題のある発言が行われたら通告するみたいなシステムはいずれできるとは思います。

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