昨年12月、“100億円あげちゃう”と銘打ったキャンペーンで社会をにぎわせたスマホ決済サービス「PayPay」。
1回の買い物で購入金額の20%が還元される(※上限は5万円)だけでなく、40回に1回は全額戻ってくる(※上限は10万円)という抽選も実施したことで“PayPay祭り”とも呼べるムーブメントを巻き起こし、キャンペーン原資の100億円はたった10日間で底を尽きてしまった。せっかくスマホにPayPayをインストールしたのに、祭りに乗り遅れてしまったというユーザーも少なくないだろう。
昨年10月にサービスを開始したばかりのPayPayはこのキャンペーンが功を奏し、すでに累計登録者は400万人を越える。「LINE Pay」や「楽天ペイ」といった競合に比べると後発でありながらも、まさに破竹の勢いでユーザーを獲得しているのだ。
そして今年2月12日、キャンペーンの第2弾が早くも幕を開けた……かと思いきや、第1弾同様に“100億円”というワードを掲げつつも、買い物1回あたりの還元上限は1000円と、控えめに。全額キャッシュバックの当選確率は10回に1回と、前回よりハードルは低くなったが、こちらも還元上限は1000円に設定されている。
100億円が尽きない限り、キャンペーンは5月31日まで続く予定で、上限額を1000円に下げたことで前回ほどの早期終了となることはなさそうだ。しかし、キャンペーンとしてはどうしても小粒になった感が否めない。
果たしてPayPayは、今回のキャンペーンでなにを狙っているのか。30年以上テレビCMのマーケティング戦略立案や調査分析、コンサルティングといった分野で活躍し、近著に『モノ売る地方CM コト得るPR動画』(幻冬舎刊)がある鷹野義昭氏に話を聞いた。
PayPayキャンペーン第2弾は、ユーザーへの“実体験”提供がねらい
「今回の第2弾キャンペーンは、100億円という還元総額は第1弾と一緒でありながらも、その意図は大きく異なっています。
前回の第1弾では、まだPayPayが無名だったところにキャンペーンを展開することで、『こういうスマホ決済サービスを新しく始めました』と世間に知らしめました。これは大々的にテレビCMを打つのと同じ感覚のPR手法であり、むしろテレビCMのほうが、キャンペーンを追いかける形で放送されていた感がありました。この珍しい逆転現象は興味深かったですね。

鷹野義昭 株式会社テムズ代表取締役
電気通信大学 経営工学科卒業後、大手広告代理店のマーケティングプランナーを経て起業。これまでに1000素材を超えるテレビCMのマーケティング戦略立案・調査分析・コンサルティングを行うなど、30年以上広告業界に携わる。
HP http://www.tems.ne.jp/
とはいえ第1弾は、新しもの好きの尖ったユーザー層を取り込んだような形にはなっていますが、実際にPayPayの恩恵を受けた人々はあまり多くなかったという印象です。ユーザーは数万円単位のキャッシュバックを求め、家電などを取り扱う大型店に流れていましたし、だからこそPayPayは、100億円をあのスピードで配り切ってしまったのではないでしょうか。
それに対し第2弾では、還元上限を下げることで、ちょっとしたジュースやお菓子といった日用品をPayPayで買うという、ユーザーの小口利用を促しています。PayPayを身近な場面で実際に使ってもらい、裾野を広げていくという狙いであり、マーケティングにおける位置づけは第1弾とは決定的に違っています」(鷹野氏)