ポイントカードや「次回使えるクーポン」は本当にお得なのか? ムダな出費を誘う仕組み

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「Coke ON」公式サイトより

 「Coke ON」というアプリを知っていますか? コカ・コーラの自動販売機のうち、このアプリに対応した機種(「スマホ自販機」)で飲み物を買うと、アプリ内のスタンプ帳にスタンプが1つ貯まります。このスタンプが15個貯まると、無料のドリンクチケットがもらえるという仕組み。お店のスタンプカードのようなものですね。

 とはいえ、それだけだと普通の「おまけ」にすぎません。自販機で飲み物はあまり買わないし、関係ないわという人もいるでしょう。しかし、この「Coke ON」には、もう1つスタンプをもらう方法があります。「歩くだけ」でもいいのです。1週間で歩く歩数の目標を決め、その目標歩数を達成するか、一定の累計歩数に到達すれば、その都度スタンプが受け取れます。飲み物を買わなくてもゲットできるわけで、これは挑戦したくなりますね。

  でも、どうして日本コカ・コーラ社は、こんなサービスをしてくれるのでしょう。自販機で買ってくれた客にならともかく、そうでない人にも特典があるなんて。

  1つ考えられるのは、「保有効果」というもの。保有効果とは、一度手にしたものには自分が支払った対価以上の価値を感じ、手放したくなくなる心理を言います。よく、テレビ通販などで「30日間返品自由、使用していても大丈夫です」というフレーズを耳にしますよね。なぜ使ったあとも返品自由なのかと不思議になりますが、これも保有効果を利用している手法なのだとか。返品できるならと購入のハードルを下げておき、いったん手にしてしまうと、手放すのが惜しくなる。良いものだと思ってしまうのです。

 こうした従来の保有効果と少し意味は違いますが、「Coke ON」などアプリのスタンプにも一種の保有効果があるのではないかと思います。

 私たちが保有するのは、「トクする権利」。正確には「トクする権利までの途中」とでも言いましょうか。

 アプリのスタンプが貯まっていき、もうすぐ無料クーポンが手に入るとします。早くコンプリートするには、歩くだけでなくドリンクを買う方法もあるわけで、だったらスタンプを稼ぐために今日は自販機で買ってしまおうか……という気にもなるのではないでしょうか。ちょっと意地悪すぎる考えでしょうか?

 でも、もしコンプリートにあと数個まで貯まったスタンプを、うっかり引き継ぎ忘れてスマホを機種変してしまった……なんてことになると、ものすごくショックを受けるはず。私たちは「トクする権利」をいったん与えられると、なかなかそれを手放せないのです。

次回使えるクーポンはムダ出費の元!

 この心理をうまく使っていると感じたのが、ある外食チェーンのキャンペーンです。ここではキャンペーン期間中に生ビールを注文すれば、その都度ビール半額クーポンをくれるそう。何回注文しても半額クーポンがもらえるなんて、すごくおトクに感じますよね。でも、そんな甘い話はないわけです。

 このビール半額クーポンは「キャンペーン期間中は使えません」というのが、そのからくり。半額クーポンをどんどん配り、次はキャンペーンが終了してからもこのクーポンを手にした客に来店してもらおうという狙いでしょう。

 当然、ビールだけ頼む客はいませんから、ビールの数だけ料理もどんどん頼んでもらえると期待できます。なかなかしたたかですよね。

 こうしたクーポン商法はあちこちにあります。次回使えるドリンクバー無料券、2000円以上の買い物をすれば10%オフになる割引クーポン、最近では無料で1品もらえるクーポンもそう。どうぞ、と差し出された「トクする権利」をいったん受け取ってしまうと、それを使わずに済ますのが非常にもったいなく感じるもの。その権利を使いたいがために、ついつい余計な支出をしてしまうのです。

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