加谷氏によれば、マツモトキヨシはドラッグストア業界の近年のトレンドにはあえて乗らず、これまでのスタイルを貫くことを能動的に選んだのではないかとのこと。では、これからのドラッグストア業界と、そのなかにおけるマツモトキヨシはどのような動きを見せていくのだろうか。
「以前であれば、Aというドラッグストアチェーンは関西中心、Bというドラッグストアチェーンは九州中心といった地域の違いがあり、それぞれのドラッグストアごとに特色がありました。そのため、ドラッグストア同士が合併するということは、今まではあり得ませんでした。ですが、特定の地域で展開していたドラッグストアチェーンが関東に進出し、なおかつ同じようにスーパーに近い業態で展開していくということになれば、売上高の規模のメリットを追求するために合併して一緒になったほうが得策だという判断になっても、不思議ではありません。
これから規模の拡大が必須ということになれば、合併やM&Aによる再編成がさらに増加していき、大きな転換期に突入していく可能性もあるでしょう。しかし、そういった転換期においてもマツモトキヨシはやはりその路線には乗らず、従来どおり都市部で高収益型の店舗展開をしていくのではないでしょうか」(加谷氏)
ドラッグストア業界の売上高ランキングだけを見れば、低迷しているようにも思えたマツモトキヨシ。しかし、その実情は不調や失敗ではなく、拡大路線を突き進むロードサイド型主体のトレンドを横目に、無理な拡大を断行しない堅実な経営スタンスを取っているように見える。
むしろ注目すべきなのは、薄利多売のビジネスモデルを採用している、ロードサイド型主体のドラッグストアたちの行く末なのかもしれない。
(文・取材=後藤拓也[A4studio])