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米中通商交渉の本音は貿易赤字の解消ではない

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北京政府の生命線 

 これに対し、中国からすれば、国内に自前の技術が育っているわけでもないので、「経済大国」を目指す長期計画を実現するためにも、なんとか米国や日本のハイテク技術を取り入れ、経済の高度化を図らざるを得ません。そのためには、今進めている知財権の侵害、技術移転の強要、サイバースパイは不可欠で、むしろ政府自らこれを促進するために補助金まで与えています。

 米国の要求に従ってこれらを停止すれば、中国経済は立ちゆかなくなり、習近平体制を維持できなくなる可能性があります。実際、米国が半導体製造装置の中国向け輸出を止めたとたん、中国は半導体生産ができなくなり、関連企業が苦境に陥り、直接半導体の買い付けを余儀なくされています。

 米国がいくら批判しても、中国政府にしてみれば、これらはいわば「生命線」です。そこで、米国の攻撃の口実になっている巨大な対米黒字自体を解消して文句を言わせない戦略に出ました。それが米国産大豆の大量買い付けや、米国からの輸入1兆ドル増強作戦です。

 それ自体簡単ではなく、中国の農業や米国製品にとって代わられる産業は大きな打撃を受けます。しかし、それでも米国が求める経済改革、つまり技術の窃盗をやめ、「メイドイン・チャイナ2025」をギブアップするよりはましとの判断です。

 これを受けて米国は、大豆の大量買い付けやエネルギーの購入に「感謝」し、これを米国民に「成果」だと強調しました。しかしながら、真の狙いが中国の経済改革にあり、最低でも知財権侵害や政府の補助金停止を確約しないと、トランプ氏も引き下がれません。ここに交渉の「ねじれ」がある以上、難しさがあります。

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