オリンピックも日産も…不祥事の調査をする「第三者委員会」の低い信頼性
政治・社会 2019.03.06 18:05
第三者委員会の調査方法と公表
それでは、これらのメンバーで構成された第三者委員会は、不祥事などをどのように調査しているのか。調査方法は事案ごとに検討されるが、基本的には関係者への聞き込みと書類やデジタルデータの確認を行う。
次に、調査結果について報告書を作成し、まずは調査依頼を受けた企業などに提出する。この第三者委員会からの報告を受けて、企業などが報告内容を公表することになる。
公表は事案ごとにステークホルダーへの影響を考慮しながら、プレスリリースや記者会見などの手段で行う。この時のステークホルダーとは、税務署や金融機関、株主、取引先、従業員などが含まれ、上場していれば証券取引所も含まれるだろう。
報告の仕方は、企業などの社会的信用への影響を決めるため、慎重に検討される。また、公表後も第三者委員会は、是正措置が実行されているかどうかのモニタリングを行う。
第三者委員会を設置する意義
第三者委員会を設置するのは、中立的な立場の専門家たちに調査を依頼することで、社会的な信用の回復を目指すためだ。そもそも問題を起こした当事者に調査能力があること自体が疑わしい。自らの調査だけでは、不都合な事実を隠蔽してしまう可能性があり、信用度が低くなる。
当然、事案によっては警察や監督官庁などの調査も入るため、企業や団体側は彼らにも協力することになる。そして、可能な限り速やかに原因と対策を講じることで、被害の拡大を防ぎ、信用回復を行おうとする。
つまり、第三者委員会は中立的立場であるだけに、調査結果によっては企業や団体のコンプライアンスがずさんであることを露呈してしまう可能性もある。したがって、企業や団体にとっては、第三者委員会を設置すること自体が、「どのような結果が出ようとも必ず改善する」という覚悟を示すことにもなる。
第三者委員会は新手のビジネスか
ところが、第三者委員会にも怪しげなものがあることが疑われ始めている。
つまり、形だけの第三者委員会を設置することで、根本的な原因究明や改善を行うことなく信頼を回復しようとする企業や団体があるのだ。
そのような第三者委員会は、メンバーに専門家が不足していたり、調査が浅かったりする。また、第三者委員会に調査を依頼した企業の経営陣が人選を行うこともあり、中立性が保たれていない可能性も高い。
第三者委員会を設置する場合は、人選のプロセスも公開できるようにしなければ透明性が高いとはいえないだろう。さらに問題なのは、第三者委員会の調査能力の高さや徹底度については、それを担保する仕組みがないことだ。
たとえば聞き取り調査の範囲が狭かったり偏ったりしていても外部にはわからないし、聞き取り能力自体が低ければ、核心を突く情報を引き出せない。その結果、調査報告書自体の信憑性が怪しくなってくる。
つまり、企業や団体が「名ばかり第三者委員会」でことを収めようと思えば、それも可能であるということだ。
実際に、東芝の第三者委員会が執行部の意向に沿って原発子会社の減損問題を調査対象から外したり、東京電力の第三者委員会が十分な調査を行わずに推認で依頼者に有利な結果を導いたりした例がある。
人はお金をくれる人にどうしてもなびいてしまうものだ。しかも、第三者委員会の報酬が時間制をベースにしていることが、おいしいビジネスを生んでいる可能性がある。
この報酬については、前述のガイドラインに以下のように記している。
“弁護士である第三者委員会の委員及び調査担当弁護士に対する報酬は、時間制を原則とする。”
しかし、時間は“申請した者勝ち”であり、弁護士や専門家が参加すれば、時間×人数分で、あっというまに膨大な金額になってしまう。
ガイドラインに時間制が書かれていること自体は突飛な話ではない。というのも、弁護士費用を時間制で決めることは一般的である。しかし、これは依頼者が弁護士の業務時間を確認できることや、依頼者と弁護士の信頼関係が築かれていることが前提だ。
ところが第三者委員会の場合は、建前上は依頼者から独立した調査を行うため、その調査活動の中身を把握できない。しかも、依頼者に不都合な調査も行う可能性があるため、信頼関係についても微妙である。かといって、成功報酬的な仕組みにしてしまうと、依頼者が期待する結果を誘導しかねない。
以上のことから、「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員長である久保利英明弁護士は、大手法律事務所にとって1件10億円が粗相場の名ばかり第三者委員会の「絶好の商機」となっていると語っている。
ここで改めて、「第三者委員会報告書格付け委員会」とは何かを紹介したい。