「第三者委員会報告書格付け委員会」とは
「第三者委員会報告書格付け委員会」は、これまで述べたような第三者委員会の問題点を指摘すべく立ち上がった有識者の団体だ。同委員会は、第三者委員会が発表した報告書を精査し、格付けした結果を公表することで、第三者委員会の調査規律を正そうとしている。
本稿執筆時点で公表されている格付けを見ると、F(失格)が多いことに愕然とする。まさに忖度なしのシビアな格付けを行っていることがうかがえると同時に、第三者委員会の多くがいかに形骸化しているかがわかる。
この第三者委員会報告書格付け委員会は、弁護士を中心としてジャーナリストと研究者(教授)で構成されている。
同委員会のサイトには、委員長である久保利英明弁護士の挨拶文が掲載されている。その文から、同委員会の意義を抜粋する。
“第三者とは名ばかりで、経営者の依頼により、その責任を回避し、或いは隠蔽するものが散見されるようになった。”
(委員会について | 第三者委員会報告書格付け委員会より)
第三者委員会報告書格付け委員会が「F」と評価した例
以下は、同委員会がFの格付けを行った事案の一部だ。評価の理由は、公開されている各レポートを参照いただきたい。
◆株式会社神戸製鋼所「当社グループにおける不適切行為に関する報告書」2018年3月6日付
D評価が3名、F評価が6名。
◆日産自動車株式会社「調査報告書(車両製造工場における不適切な完成検査の実施について)」2017年11月17日付
D評価が6名、F評価が2名。
◆公益財団法人日本オリンピック委員会調査チーム「調査報告書」2016年8月31日付け
D評価が6名、F評価が2名。
◆東亜建設工業株式会社の社内調査委員会による「平成27年度 東京国際空港C滑走路他 地盤改良工事における施工不良等に関する調査報告書」2016年7月26日付け
◆9名の委員全員がF評価で一致。
(格付け結果 | 第三者委員会報告書格付け委員会)
第三者委員会は正しく機能するのか
同委員会の格付けレポートを読むと、暗澹たる気持ちになる。増え続ける「名ばかり第三者委員会」はなくせないのだろうか。同委員会による格付けがより多くの人に知られて権威ある格付けと認知されるようになれば、少しは歯止めがかかるかもしれない。
そのためにも、メディアは第三者委員会に関する報道を行う際には、できるだけ第三者委員会報告書格付け委員会の格付け評価も合わせて紹介するようにすべきだ。
近年、品質で世界に評価されてきた日本企業のモラルが下がってきていることを感じている人も多いだろう。テレビでも、記者会見で「申し訳ありません」と頭を下げる経営陣の映像を頻繁に目にする。これから同委員会が妥協や忖度のない厳しい格付け評価を続け、その結果として第三者委員会の質が高まることを望みたい。
そして、それ以上に第三者委員会が必要とされない企業や各種団体の活動を期待したい。