24時間営業の利便性のしわ寄せ
確かに24時間営業は便利だ。実際に深夜から明け方までの時間帯に使うことがほとんどなくても、いざ何かあればコンビニが営業しているという安心感がある。しかし、24時間営業を維持するための労働力を確保することはかなり難しい時代だ。
オーナーは、当然自分の経営する店の売り上げを上げたいからがんばるが、人には体力的な限界がある。そこでアルバイトを雇用すれば良いのだが、長期間にわたって都合の良い時間に来てくれるアルバイトを見つけることは難しく、夜間の人件費も経営を圧迫する。
そうなれば、必ず誰かが長時間労働せざるを得ず、結局しわ寄せはオーナーや店長にくる。オーナーが睡眠や休日を確保するためには、その間に働いてくれる人を確保しなければならない。
セブンイレブンには「オーナー業務代行制度」【*1】という支援制度があるが、実際にこれがどれだけ適用されるかは、曖昧な表現に留まっている(適用されていれば今回のような問題は起きないのではないか)。
そして、オーナーを追い詰めるのは、前述した違約金だ。ちなみに、松本さんが店を閉めたのは深夜1時から朝の6時までのたった5時間だ。この時間帯に来るお客さんの人数はどれほどだったか。がんばって営業しても、大して売上げにならない時間帯だ。むしろ人件費や光熱費で赤字になる可能性もある。
コンビニの仕事の幅広さ
オーナーのほかに正社員の店長がいる場合でも、やはり365日24時間の連続営業を継続するには、どうしても何人ものアルバイトを雇用する必要がある。アルバイトにしても、一人ひとりの働ける曜日や時間帯は限られているため、頭数が必要になる。しかも、コンビニの店員の仕事は多岐にわたる。多くの人がそのマルチな働きぶりを目にしているだろうが、私たちに見えている以上に仕事は多い。
メインはレジ業務だが、宅配便の受付や公共料金の代行収納、店内の清掃、品出し、商品の発注、揚げ物やおでんなどの調理・セッティングなど、ざっと思いつくだけでもその業務の多様性がわかる。つまり、だれでもすぐにできるような仕事ではない。これでさらに深夜となれば、そう簡単にアルバイトを見つけることはできないだろう。
アルバイトすら過労死する現場がある
2012年12月、大阪府大東市内のファミリーマートで働いていた62歳の男性従業員が、月218~254時間に及ぶ時間外労働で過労死した。
このような過酷な労働環境では、アルバイトも命がけだ。人が集まらないから、すでに働いているアルバイトへの負荷がますます大きくなる。
厚生労働省東京労働局が2018年3月30日に発表したレポート【*2】によれば、都内のコンビニの実に95.5%で労働法違反が確認されたという。つまりほとんどの店だ。
オーナーや店長がまっとうな生活を送ろうとすれば、どうしてもアルバイトを増やすしかない。しかしアルバイトは集まらないので、今いるアルバイトの負担を増やすしかない。
ならば、時給を上げればアルバイトは増えるだろうか? 確かに、少しだけでは難しいが、思い切った金額まで時給を上げれば、応募者は増えるかもしれない。しかし、それをやってしまうと、今度は人件費がかさんで経営が危うくなるのだ。ここにコンビニが利益を出しにくい構造がある。