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本も売れなければ安くなる? アマゾンの「買い切り」が「再販制度」に投じる大きな一石

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アマゾンより

 2月1日、アマゾンジャパンは本が売れ残っても返品しない「買い切り」方式で書籍や雑誌を仕入れることを発表した。といっても、出版物の特殊な流通形態をご存じない方は「だから何?」と感じるかもしれない。

 しかし、思い出してほしい。ほかの商品と異なり、書籍は日本全国どこに行っても同じ定価で販売されている。書店によって安売りされていたり、売れ残ったからといって半額セールをしたりすることもない。

 不思議ではないだろうか? 実はこのアマゾンの発表は、出版業界や書店にとっては、これまでのビジネスモデルを見直さなければならないインパクトがあるのだ。アマゾンはこれから出版社との本格的な協議に入るとしているが、もしかしたら、今後は書籍が安くなるかもしれない。

再販売価格維持制度(再販制度)とは何か

 日本の出版流通は、ほかの商品とは異なる。その違いは私たちの目にも見えていて、書籍や雑誌だけはどの店に行っても販売価格が同じだ。駅前の書店だから高いとか、住宅地だから安い、あるいは離島だから高いといったことはない。

 また、売れ残ったからといってワゴンセールで割引販売されることもない。安くなるのは中古市場に出回ってからだ。

 これは、「再販売価格維持制度(再販制度)」という特殊な流通方式に理由がある。再販制度とは、出版物の販売価格の決定権を出版社が持ち、書店などの小売り側では勝手に変更できない制度だ。

 本来、このような制度は独占禁止法で禁止されているのだが、書籍については例外として認められている。この再販制度が、書店を守ってきたといわれているのだ。

なぜ再販制度が必要だったのか

 なぜ、出版物は例外的に再販制度が認められてきたのか。一般社団法人日本書籍出版協会は、以下のように説明している。

“出版物には一般商品と著しく異なる特性があります。

①個々の出版物が他にとってかわることのできない内容をもち、

②種類がきわめて多く(現在流通している書籍は約60万点)、

③新刊発行点数も膨大(新刊書籍だけで、年間約65、000点)、などです。

このような特性をもつ出版物を読者の皆さんにお届けする最良の方法は、書店での陳列販売です。”

  ちなみに同協会のwebサイトによれば、現在流通している書籍は約60万点、年間に発行される新刊だけで約6万5000点あるという。

 そして、この制度がなければどのような不具合が生じるのかについても同サイトは説明している。

“①本の種類が少なくなり、

②本の内容が偏り、

③価格が高くなり、

④遠隔地は都市部より本の価格が上昇し、

⑤町の本屋さんが減る、という事態になります。”

 つまり、再販制度がなくなれば出版物の価格競争が生じるため、書店はみな、売れ行きが良いと予測できる本ばかりを仕入れるようになる。その結果、専門的な本が流通しなくなり、出版物の多様性が失われてしまう。

 しかし、この考え方は出版不況といわれている現在でも有効なのだろうか。再販制度をもってしても、書籍の売れ行きは下がり、書店の閉店が相次いでいる。

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