
ブレない女、及川眠子さん
世間には、他人から愛されるための指南本があふれています。異性に好かれ同性に憧れられる、インスタ映えする存在であるように追い立てられる風潮に疲れていたり、そもそも「生きづらさ」を感じていたり。SNS上では、そんなひとたちのため息を目にすることも増えました。
このほど出版された本『誰かが私をきらいでも』(KKベストセラーズ)は、そんな息切れしているひとたちへの、思考や生き方のヒントが詰まった一冊です。著者は、Wink「淋しい熱帯魚」や、やしきたかじん「東京」、テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の主題歌「残酷な天使のテーゼ」など数々の名曲を手掛けた作詞家で、アーティストのプロデュースやエッセイの執筆などマルチに活躍する及川眠子(おいかわ ねこ)氏。
みんなきらわれることに怯えている
プライベートでは、2度目の結婚相手だった18歳年下のトルコ人男性のために3億円を費やすなど、波乱万丈な人生を送ってきました。そんな及川氏が実践してきた「自分」を貫いて生きていくための人生哲学とは「“きらわれる”を恐れないことで、その恐怖感から抜け出せる」というもの。その理由と秘訣を、及川氏にうかがいました。
――『誰かが私を〜』は、及川さんがこれまでに自身のツイッターで発信された内容をもとにした一冊です。「きらい」と掲げられているタイトルは、ドキっとするもんですが。
及川:ツイッターは、そのとき思ったことをメモがわりにも使っています。いろいろツイートはしていますが、本のテーマを「きらわれる」にしぼったのは、プロインタビュアーの吉田豪さんへの、ある若者からの「返事をしないんならきらってやる」というリプライを見たことがきっかけです。きらうってことは、武器にできるほどみんな怯えるものなんだなぁって。
ほかにも「あなたの意見は間違っているからきらいだ」とか、そんなことをいっているひともみました。「間違っている」って、単に自分の考えと違っているだけなんですよね。明らかに常識的な間違いは別にして、人の数だけ考え方や生き方があって当然で、正解も間違いもない。自分に自信がなくて正当化したいだけだから、違う考えを受け入れられないんです。
――きらわれないことを説くのが大半のなか、その逆方向にいったのはなぜでしょう。
及川:ひとはどうやったって嫌われるものです。以前ツイートしたことがあるんですが「自分の意見を言ってきらわれるのはいやだから、ツイッターに無難なことしか書かない」という内容に「でも私は、そんなあなたがきらい」って。きらいって、好きと裏返しだと思っているんです。好きっていってくれるひとがいれば、絶対にきらいって言うひともいるんですよね。それを怖がっていたら、何もできない。
ツイッター上には、生きづらさがあふれていますね。みんな、言う場所がないから。生きづらさを訴えるリプが寄せられることも多いです。時間があるときは返信もしますが、どうしてこんなにこじれているの、そんなに複雑な問題じゃないよと言ってあげたいですね。