令和が来る前に世界に1つだけの花を――「ナカイの窓」の外、あるいはSMAPと移民の唄

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 SMAPの楽曲と「移民」を結びつけるなど、あまりにも強引だと思われるだろうか。だが、その心配は無用だ。1992年の「SMAP 1stLIVE『やってきました お正月!!』コンサート」の段階ですでにSMAP自身が移民と結びついてきたからだ。

 『SMAP 1stLIVE「やってきました お正月!!」コンサート』のVHSの裏面および同封された曲目リストには、16番「メドレー」の中に「Immigrant Song (移民の唄)」との記載がある。移民の唄とは、誰もが一度は聞いたことがあるはずのイギリス発の世界的バンドLed Zeppelin(レッド・ツェッペリン)の代表曲だ。実際にVHSを流してみると、時間にしてわずか17秒足らずのカバーである。しかも、カバーというよりも2人1組で踊るときのBGMといった扱いだ。Jimmy Pageのギターが鳴り響く一方でRobert  Plantの特徴的な裏声をメンバーの誰かが模倣するわけでも なく、あっという間に次のJimi Hendrix(ジミー・ヘンドリクス)の「PURPLE HAZE」の日本語カバーへとうつってしまう構成なので、当時、会場で聞いていた観客も、それが『移民の唄』であると気づかなかった人々は大勢いるのではないだろうか。

 ボーナストラックを含めて112分におよぶ映像のうち、たったの17秒。ほんの17秒だけ、ライヴ会場で流れた「移民の唄」。まるで、海外ルーツの人々の言葉や問題状況が、なかなか聞き届けられない極東の島国の現状を示唆しているかのようだ。

 もっとも、レッドツェッペリンが歌ったのは氷と雪に覆われた大地から、緑に溢れる西海岸を目指す「移民」の姿だったが。

 ところで、「移民の唄」を含めたメドレーが始まる少し前に、中居正広は「私生活には、苦しいこと、悲しいこと、寂しいこと、人との争いがあると思います。そんな壁をみんなで乗り越えたいなと思ってます」とマイクを通して述べた。「壁」の具体像に言及がなされているわけではない。だが、コンサートが開催された1992年といえば、労働力不足を解消すべく入管法が改正された2年後である。若かりし中居が語った「壁」と、当時の入管法改正に伴いやってきた人々の目前にあった「壁」はどのような位置関係にあったのだろうか。「壁」のそばで咲こうとする「花」に、当時の彼は気づいただろうか。「壁」のそばで咲こうとする「花」を笑った2019年の彼と、彼の外国人ネタで笑った人々は、令和になる前に「壁」に気がつくだろうか。それとも、「世界に1つだけの花」らしく、自分という「その花」を「咲かせることだけに一生懸命になればいい」と思い続けるのだろうか。

 令和時代の「壁」と「花」は、それぞれどのような姿をしているのだろう。

 そもそも「移民」をふくめて、極東の島国住まう人々が「花」を咲かせるのに必要な環境は整えられてきたのだろうか。このように問うことは、きっと野暮にちがいない。なにしろ、「花」を咲かせられる「日本」を作り上げようという願いが込められた元号なのだ。そう、そのことを嘘が許されるエイプリルフールに聞いたばかりだ。

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