「薄利多売のビジネス自体は否定されるものではありませんが、そもそも客数が確保されなければ利益を上げることはできません。しかし、今の消費者は安かろう悪かろうではなく、おトク感や満足感がなければ振り向いてくれないのです。
総務省統計局が昨年2月に発表した『家計調査報告(家庭収支編)』(2017年)によると、消費支出の費目別対前年増減率で、外食の実質増減率は-0.6%でした。日本では外食への消費性向が下がっているだけでなく、デフレ期のようにただ“安ければ売れる”という時代ではなくなりつつあるのです。
というのも、昨今は多品種・大量販売のスタイルが淘汰され、ポテトサラダや唐揚げというニッチな専門店の成功に見るような、少品種・少量販売がトレンドになっています。これは商品数を絞り込むことで適正な利益を確保しつつ、それなりに売れれば商売が成り立つという販売戦略です。単身家族や高齢世帯が増えてきた現在の日本では、量よりも、むしろある程度の質が求められており、ニーズにマッチしているわけです。
逆に、原価率の高さを売り物にして肉ブームに乗っかった『いきなり!ステーキ』は勢いを落としています。客単価を上げるために、『リブロースステーキ』であれば最低300グラム(1グラム当たり6.9円、税抜)から注文を受け付けていますが、外食に手頃な価格とおいしさを求める客にとっては、このような中途半端な販売戦略は不合格だったということでしょう」(重盛氏)
これからの外食チェーンには“店舗体験”の創出と“エコ”の強化が必須
戦略ミスに陥るチェーン店が多いなかで、さらに社会的な逆風も吹いている。人件費問題は、年々深刻になっているそうだ。
「2016年から2017年にわたって外食産業に追い風が吹き始めると、人材の確保は再び困難な問題となりました。外国人アルバイトの姿が各店舗で当たり前に見られるようになったのも、ちょうどこの時期と重なります。昨年2月に内閣府より発表された『外国人労働力について』の資料では、2017年の外国人労働者数は127万8670人と、実に対前年比18%増でした。
もともと外食チェーンやファストフードは、大学生のアルバイト先としてよく選ばれていました。ところが就職活動の長期化やインターンシップなどにより、アルバイトをする大学生の絶対数が、昔に比べて減少しているのです。
たとえばファストフードの代名詞である『マクドナルド』は大学生アルバイトを大きな戦力として活用しており、昨年では『LINE』で顔写真を送るだけで応募が可能という採用方法を取り入れました。履歴書すら不要です。外食産業では現在、“大学生アルバイト”という少ないパイの奪い合いが起きており、採用経費の増大、ひいては時給の高騰に直結しているのです。
つまり人手不足は、もはや日本人だけでは解消できないということ。より多くの人材を集めようと、各店舗のアルバイト時給が最低賃金を上回るほど高騰していったのも自然な流れです。また、労働者がよりよい時給で仕事を選択する傾向になるもの当然でしょう」(重盛氏)