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『妻のトリセツ』大ヒットという危機感 ジェンダーロールとインチキ脳科学の結びつき

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『妻のトリセツ』 (講談社+α新書)

 「男脳」や「女脳」を提唱するタイプの“脳科学”が花盛りだ。昨年10月に出版された黒川伊保子氏の『妻のトリセツ』(講談社+α新書)は、ベストセラーとなり、20万部を突破している。感性リサーチ代表取締役社長の黒川氏は、“独自の脳研究”の結果である「男脳」「女脳」トークをテレビや雑誌で披露しており、また、先月波紋を呼んだ江崎グリコの子育てアプリ「こぺ」の監修担当でもある。

 「こぺ」は、先月江崎グリコが発表した「Co育てPROJECT(こそだてプロジェクト)」の取り組みのひとつで、〈夫婦間の意識のすれ違いを認識し解消に導くコミュニケーションツール〉として開発されたものだが、「男性脳」「女性脳」を根拠としたアドバイス記事が多く掲載され、Twitterなどで批判的な意見が出ていた。

グリコ子育てアプリが採用した「男性脳」「女性脳」というジェンダーステレオタイプ

『世界一受けたい授業』でも「男性脳と女性脳」企画、“平均的な脳の性差の傾向”紹介に意味はある?

 <子育てパパとママのすれちがいのストレスを減らすには、まず、パパとママの脳のちがいを知ることから。脳を装置として見立ててみると、男性脳と女性脳では回路のかたちや信号の種類がちがうから、当然、おなじ入力に対しての出力も変わってくるよ。それなのに、パートナーを自分と同じように扱おうとするから、ストレスを感じてしまう>

 <脳には性差がある。それが、右左脳が連携がよく、察することが得意な女性脳と、連携が頻繁でなく、空間認知力に優れた男性脳。女性の多くは女性脳の持ち主で、多くの男性は男性脳を搭載しているんだ>

 「こぺ」では、このような前提のもと、妻/女性向けアドバイスと夫/男性向けアドバイスが掲載され、<女性脳は何より共感を求めているの。話を聞いてくれて、共感さえしてくれればOKなの><男性脳は、相談を受けると、つい、最短時間で問題解決を図ろうとする脳><女性は「察してほしい」生き物><生まれつき男はニブい>などアドバイスが掲載されていた。

 また、「こぺ」のキャンペーンサイトでは、「パパのためのママの気持ち翻訳」なる企画が行われていた。ママの「仕事と家庭どっちが大事なの?」という言葉を翻訳すると「私は何より家庭を優先してるのに、あなたは仕事ばかりなのが寂しいわ……」で、「好きにすれば?」は「それをやったら、もう知らないから!」、といった具合だ。そして「寂しい思いをさせてごめん、と謝って」などとアドバイスが施されていた。

 「ステレオタイプを助長している」「男女の対立を煽る」といった批判を受け、江崎グリコは先月23日、「こぺ」のキャンペーンサイトを終了した。しかし、アプリの「こぺ」は継続しており、「男性脳」「女性脳」を用いたアドバイス記事も残ったままだ。

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