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40歳を過ぎても「いつか王子様が」の呪いを断てない女性

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 出版社に就職したミユキは、憧れの漫画家ガンダーラ金子の担当に。「君にしか描けないものを書けばいいんだよ」といってくれる包容力のある彼に惹かれつき合いますが、金子は妻帯者でした。一方現実のアキナは、息子ほどの年齢の役者志望のコウキ(大和の二役)との関係が深まり、自身の人脈や知識をフル活用して、彼を一流の男に育てようとします。

 鈴木の演じるアキナは、作品も世に認められた自立した女性。仕事のうえでは、「―いばら姫」の結末を、ドラマ化ではわかりやすいハッピーエンドの結婚に改変したいというテレビ局の要望をつっぱねる強さと、結局は受け入れる柔軟性も持ちあわせています。鈴木のたたずまいは、そんなアキナの内面に抜群の説得力がありました。

王子様はいつ現れる?

 30歳を目前にしたミユキは結婚を見据えた交際を目指すものの、つき合うのはやっぱりダメ男ばかり。30歳になったのを機にアキナは「いつか王子様が現れる」という思いを封印しますが、消し去ることはできませんでした。離れていったコウキにすがる姿は、みっともなくもあるけれど、自分の気持ちに素直であるがためにとてもチャーミング。愚かな姿こそ魅力的に演じられる、鈴木の存在感はさすがでした。

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ウェジー 2017.12.05

 アキナが愛しくみえるのは、ミユキ役の藤井千帆の存在も大きかったように感じます。ダメ男やクズ男という“魔物”と王子様の見極めができないやるせなさや、大台の年齢がせまる女性の焦燥感は、身につまされるもの。その切実さを藤井が表現しきっていたからこそ、鈴木の演じるアキナの切なさがより迫ってきたのでは。

 アキナは、眠らせたはずの自身の中のミユキと見つめ合います。「あんなもの描いたって、何にもならないよ」「でも私は、あなたみたいに描きたい」――。男の目を気にして振り回されていた20代の自分が、それでもつかみとってきた未来が、現在の自身。自分にとって本当の幸せとは何なのか。「どんなにみじめでも描いて描いて、それで生きていける」。幸せとは自分が決めるものだと気づけるのは、それ自体がすでに幸せなことです。

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