毎月勤労統計だけではない、生活保護費引き下げに使われた「消費者物価指数」をめぐるもうひとつの統計疑惑

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(1)    なぜ2008年から2011年で計算したのか

 生活扶助費の改定は直近で2004年に行われていたため、普通なら比較対象は2004年にすべきところ、なぜか2008年を比較対象年としています。実は2008年は原油価格や穀物価格の高騰により物価が局所的に高くなった年でした。より下落率を大きくしたいための操作と捉えられても仕方のない基準の取り方でしょう。

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2010年基準消費者物価指数(総務省統計局)

  それでも、総務省のデータで2008年から2011年の下落率を計算すれば−2.35%となり、5%近い極端な下落率というわけではありません。

(2) 計算方式の違い

 消費者物価指数の計算方法にはいくつかの手法が提案されているのですが、世界的に主流の計算方法がラスパイレス方式です。

 もちろん総務省統計局の諸費者物価指数もラスパイレス方式で算出しています。しかし、厚生労働省はなぜか2008年の2010年基準生活扶助相当消費者物価指数をパーシェ方式で計算しているのです。

 この方式によれば

 2008年 104.5 → 2010年 100

となります。そしてなぜか2011年の2010年基準生活扶助相当消費者物価指数は総務省と同じラスパイレス方式で計算しているので

 2010年 100  → 2011年 99.5

となり、結果、下落率は

 (99.5ー104.5)/104.5= −4.78%

と総務省のものより下落率が膨らんだように見えるのです。

 なお、パーシェ方式をラスパイレス方式で置き換えて計算すると

 2008年 101.8 → 2010年 100 → 2011年 99.5

で下落率は

(101.8ー104.5)/104.5= −2.26%。

これは総務省のものに似た数値になります。

(3)    生活保護世帯の実情とかけ離れた計算

 消費者物価指数の計算には、計算対象となる「品目」の「価格変化率」と「支出割合」が使われます。

 「生活扶助」のための消費者物価指数であれば、その計算対象となる品目は生活必需品の支出割合が大きく、嗜好品の割合を縮小して計算しているものと思われるでしょう。ところが厚生労働省が計算のために使用した支出割合は一般家庭平均のものと同じだったというのです。

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