社会

目に見えない障害者のための「ヘルプマーク」をつけている人に気付いたら?

【この記事のキーワード】
目に見えない障害者のための「ヘルプマーク」をつけている人に気付いたら?の画像1

ヘルプマーク

 障害者には車椅子のように目に見える障害を持つ人と、外見では判断できない障害を持つ人がいる。外見からはわからない障害を持つ人は、ヘルプマークをつけて外出していることがある。

 ヘルプマークは、赤字の長方形に白のハートと十字を描いたデザインだ。鞄などにつけられるようになっていて、裏面には疾患名や配慮してもらいたいことなどをシールに記入して貼り付けられる。障害が外見からわからなくても周囲の人に知らせて援助を得やすくなるようにと、2012年に東京都福祉保健局が作成したのがはじまりだ。

 2017年7月には東京都発のヘルプマークがJISの案内用図記号に採用され、全国共通のマークになった。それ以降、広く普及することが期待されたが、まだ認知度は高くない。しかしながら、全国でのヘルプマーク導入は少しずつ進んでおり、2019年3月1日現在ヘルプマークを導入している道府県は35にのぼる。

ヘルプマークはどんな人が使うのか

 ヘルプマークは、特定の対象の病気を持つ人だけが使うものではない。義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病を持つ人、病気ではないが妊娠初期の人など、援助や配慮を必要とするすべての人が使える。

 内部障害には、心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害、膀胱・直腸機能障害、小腸機能障害、免疫機能障害、肝臓機能障害がある。また、難病の中には全身のだるさやめまいなどを伴う血液の病気のひとつであるMDS(骨髄異形成症候群)や全身に慢性的な激しい痛みを生じる病気の繊維筋痛症などがある。いずれも、外見では病気であるとわからない。

 それ以外にも、視覚や聴覚に障害があって状況把握が難しい人、肢体に障害があり自力での迅速な行動が難しい人、パニック障害や発達障害の人などが使用していることも多い。

ヘルプマークの配布方法と配布自治体

 ヘルプマークの受け取りには、障害者手帳などの提示は必要ない。援助や配慮を必要とする人すべてが、ヘルプマークを使用することができる。主に自治体の障害福祉課や保健所などで無料で受け取れる。都内では都営地下鉄の駅、都立病院などでも配布している。

 配布方法は、自己申告のみで配布、または申請書に記入した後に配布するなど、自治体によって異なる。本人だけでなく、家族の受領や郵送申請での配布に対応する自治体もある。

 ヘルプマークの配布場所はまだ少なく、実際に使用したい人が受け取りにくいという問題もある。一方、国の共生ホストタウンとして都内で初めて登録された世田谷区は、区役所だけでなく総合支所や図書館での配布も行っており、受け取れる場所が多い。

優先席にヘルプマークステッカー標示で認知度アップを

 ヘルプマークの現状は、見た目だけでは配慮や援助が必要なことがわかりにくい人たちが、交通機関の優先席に座る際に非難されるのを防ぐ役割として利用されることが多い。

 ただ、ヘルプマーク自体の認知度が低いので、「病気を抱えているので席を譲ることができません」など詳細を記した裏面を見せて優先席に座る人たちもいる。

 2019年3月現在、車両内の優先席等にヘルプマークのステッカー標示があるのは、都営地下鉄(浅草線、三田線、新宿線、大江戸線)都営バス、都電荒川線、日暮里・舎人ライナー、ゆりかもめ、多摩モノレールだ。また、関西の鉄道事業者20社局共同で今年1月9日から2月8日をコア期間としてヘルプマークについてのポスターを掲出した。今後は随時優先席に掲示していく予定だという。

 また、東京メトロでは2018年12月から優先席ステッカーを、ヘルプマークを組み込んだデザインに更新し、全車両の優先席付近に掲出を開始した。今年2月には西武鉄道が東京都・埼玉県と連動し、西武鉄道所有の全車両の優先席にヘルプマークステッカーの掲示を始めた。これは、ユーザーからの要望に応えたものだ。交通機関の優先席にヘルプマークステッカーを標示することは、認知度を上げるのに効果的だろう。配慮や援助が必要でも外見からはわからない人が優先席に座っていても無用な誤解を避けることができる。

ヘルプマークを身につけた人を見かけたら

 東京都福祉保健局のホームページには、「ヘルプマークを身につけた人を見かけたら、電車・バスの中で席を譲ることや駅や商業施設などで声をかけるなどの配慮、災害時は安全に避難するための支援をお願いします」と記載されている。

 交通機関の事故や突発的な出来事に対して臨機応変に対処することが困難な人、視覚障害者や聴覚障害者など状況把握が難しい人、肢体不自由者など自力での迅速な避難が困難な人が安全に避難できるように支援を呼びかけている。

「ヘルプカード」には必要な支援内容が明記

 ヘルプマークだけでなく、ヘルプカードというものもある。ヘルプカードは、緊急連絡先や必要な支援内容などを記載した紙製のカードだ。表面にはヘルプマークと同じ赤に白のハートと十字のマークと、「あなたの支援が必要です」というメッセージが書かれている。

 記載内容は、「この緊急連絡先に電話してほしい」「うずくまっていたらかばんに入っている薬を飲ませてほしい」「救急車を呼んで記載のかかりつけ医に連絡してもらいたい」などさまざまだ。

 援助や配慮を必要とする人は、ヘルプマークとヘルプカードの両方を持ち、ヘルプマークは見える位置につけていることが多い。ヘルプカードは鞄の中などに携帯し、必要時に取り出して援助をお願いするものだ。なんらかの援助が必要そうに見える人には、ヘルプカードを持っているかどうか聞くことも助けになる。そうすることにより、内容を確認して具体的な援助ができる。

 ヘルプマークやヘルプカードを使用している人たちは、障害を抱えながらの通勤や通院に大きなストレスを抱えることが多い。緊急時には具体的にお願いしたい手助けの内容を、口頭で説明できないこともあり得るのだ。

知っていることですぐに行動できる

 漫画家のぷちめいさんの「ヘルプマークの漫画」が、Twitterで話題になったことがある。これはぷちめいさんの体験を元にしたものだ。

 ぷちめいさんは、ヘルプマークをつけている男性を電車で見かけたが、ヘルプマークの意味を知らなかった。この男性は電車内で倒れたが自力で立ち上がり、ぷちめいさんと同じ駅で降車した。するとすぐに女性が駆けつけ、この男性を手助けした。ぷちめいさんは後にそのマークのことを調べて、それがヘルプマークというものであると知る。そして、あの時知っていたらもっと違う対応ができたかもしれないと後悔したという。

 人を当たり前に手助けしたり援助したりする社会をつくるのは、決して難しいことではない。ヘルプマークを知っているだけでも、困った人を助けたり、命を救ったりと、すぐに行動はできるのだ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。