YOUは親の余裕のなさも起因しているのではないかと指摘し、ジャーナリストの猪熊弘子氏も「完全に虐待だが、育児ですごくイライラするのはある」と助言した。
猪熊氏「今すごく多いのが言葉の虐待。言葉でもっと暴言を言っているお母さんたちもいると思うんですね。このお母さん、『私の心のほうが痛い』って言っていたけど、すごい苦しいんだと思います。それをこう、何か外に出せる場所が必要なんだと改めて思いました」
すると坂上は「そんなの大人だったらてめぇで見つけろって話だと僕は思いますけどね」と語気を強める。千葉県野田市の虐待死事件や、神奈川県横浜市で3歳児に火傷を負わせ放置した事件など、凄惨な児童虐待事件が続けざまに報じられており、憤りを感じているのかもしれない。
しかし、親を責め立てるだけで児童虐待は防げない。猪熊氏の「外に出せる場所が必要」という提案に、坂上は「大人だったらてめぇで見つけろ」と突き放すが、そのような場所を見つけられず追い詰められる親が現実に存在しているから、事件は起きるのではないか。
「てめぇで見つけろ」と親を突き放しても、しわ寄せは子どもに行く。それでは子どもも親も救われないだろう。虐待が許されない行為であることは確かだが、親を断罪して終わるのではなく、虐待してしまう親の背景に何があるのか、社会は目を背けてはならないし、冷静に見つめなければならない。
親の側も“困っている人”である可能性
坂上忍ももちろん、子育てを母親だけの責任にしたいわけではないはずだ。「やっぱり旦那さんがお母さんのほうの、奥さんのほうの心の叫びじゃないけど、『私いっぱいいっぱいなんです』っていう、そういうSOSみたいなのを察知してあげる作業がご夫婦では大事なんじゃないですか」「子育て、相手が子ども、言うこと聞かない、ままならない。キーキーそりゃしますよね。でも、やっぱりそういうのを旦那さんがどうやって話聞いてあげるのとか、察知してあげるのか、やっぱり何より奥さんの助けになるでしょう」とも語った。恐らくだが、ほぼワンオペ育児状態にある母親(妻)の心の叫びを、仕事で長時間家を空ける父親(夫)が察知する、という状況を想定しているのだろう。それもひとつの解決策ではある。
だが、そのような相互補完が成り立たない家庭も存在するし、子育てを家庭内ですべて賄える家庭ばかりではないことに、留意しなければならないと私は考える。子育てをすべて家庭内で完結させようとすること自体が、虐待リスクを高めてはいないだろうか。
番組内ではヒロミが「親になったら全員、虐待する可能性を持っている」とも言っていた。児童虐待は決して一部の“ひどい親”“ひどい家庭”だけの問題ではない。親の側も“困っている人”であり、ケアやサポートを必要としている可能性があることは、忘れてはならないのだ。特に大きな影響力を持つテレビの情報番組においては、親の資質の問題や家庭内で解決すべき問題と矮小化せず、広い視野で捉えてほしい。
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