
Killing Cancer Cells with the Help of Infrared Light – Photoimmunotherapy(YouTubeより)
昨年、京都大学の本庶佑特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことにより、世界中でがんの免疫治療薬である「オプジーボ」が知られるようになった。
ところがこれと前後して、医学会はもう1人の日本人の研究に驚きを持って注目していた。米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員が研究している「光免疫療法」だ。
すでに治験の最終段階にあるこの研究は、がんの治療に革命をもたらすとして期待されている。いったいどのような治療法なのだろうか。
標準治療は外科手術、放射線、抗がん剤
現在行われているがんの治療法は、メリットがあるから選択されているものの、当然ながらゼロリスクではない。がんの治療をしているはずが、治療するほど体が壊れていくといった現実に直面する患者もいる。
現在のがんの治療法は大きく3つに分けられる。外科手術、放射線、抗がん剤だ。これらの治療は副作用が大きい。たとえば外科手術を行えば、当然周囲の組織も傷つくし、生きるために大事な役割を担っていた部位を摘出せざるを得ないこともある。
抗がん剤はピンポイントで治療できる薬ではないため、全身の細胞にさまざまな副作用をもたらし、場合によっては大きな苦痛をもたらす。放射線なら一見ピンポイントで治療できるように思えるが、実際は周辺の組織への悪影響から副作用で苦しむ患者さんも多い。免疫細胞を減少させるため、がん再発のリスクも伴う。
こうした標準治療を受け寛解する患者はもちろんいる。一方で、標準治療をリスキーであるとして拒み、代替医療に走ってしまう患者もいる。
そこでオプジーボが注目された。オプジーボは上記の治療法に比べて副作用が小さいと考えられるためだ。とはいえ、自己免疫疾患などの副作用はあり、必ずしもすべてのがんに効果があるわけではない。しかもオプジーボは、直接がん細胞を死滅させるわけではない。
ここに、従来のがん治療の「効くかどうかわからない」「副作用で苦しむ」といった常識を覆す革命的な治療法として期待されているのが光免疫療法だ。