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ピエール瀧や新井浩文…出演者逮捕で映画が“お蔵入り”する理由って本当は何なの? 「ゆうばり映画祭」が真正面から向き合う

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「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」絵/久保周史

 俳優のピエール瀧こと瀧正則容疑者がコカインを使用したとして、麻薬取締法違反の疑いで逮捕された。瀧は放送中のNHK大河ドラマ『いだてん』に出演中であるほか、4月5日には映画『麻雀放浪記2020』(白石和彌監督)の公開が控えている。

 NHKは『いだてん』3月17~31日放送分は滝の出演シーンをカットして放送し、撮影済のシーンは代役を立てて撮り直すとしている。また『麻雀放浪記2020』については、配給会社の東映など製作委員会が対応を協議し、再撮影は不可能と判断。予定通りの公開に向けて最終調整する方向であると報じられているが、公開に踏み切ることには賛否両論があるだろう。

 今年2月には、俳優の新井浩文も派遣マッサージ店の女性従業員に性的暴行を加えた疑いで逮捕されている。新井が出演し、今年6月に公開が予定されていた出演映画『台風家族』(市井昌秀監督)は逮捕直後に公開の延期を発表。また今秋公開予定だった主演映画『善悪の屑』(白石晃士監督)も中止が決定されている。

 さらに、過去作への影響は計り知れない。昨年8月に公開された新井の出演映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(大根仁監督)は、2月に予定していたDVDの発売を延期。また動画配信サービス「NHKオンデマンド」は、大河ドラマ『真田丸』をはじめ10作品を配信停止した。

 これまで出演してきた作品は、映画だけでもピエール瀧が54本、新井浩文は71本。いずれも多数の映画やドラマに“名脇役”として出演していた俳優だけに、多くの作品が“お蔵入り”の危機に瀕している。
 
 しかし、出演俳優の逮捕による作品の“お蔵入り”について、「作品に罪はない」という声も続出している。SNS上では「過剰な自粛はやめてほしい」「過去の作品の販売や放送まで自粛するのはやりすぎ」という否定的な意見が多い。しかし一方で、「被害者がいる犯罪の場合は当然の対処だと思う」という意見も見られ、議論が盛り上がっている。

「ゆうばり映画祭」が上映に踏み切った韓国の問題作

 こうした作品の“お蔵入り”問題に真正面からぶつかったのが、3月7日から10日にかけて北海道・夕張市で開催された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019」(以下、「ゆうばり映画祭」)だ。
 
 今年度の「ゆうばり映画祭」は、オープニング作品として韓国の鬼才、キム・ギドク監督の『人間、空間、時間、そして人間』(仮題)を選出したが、同作は2018年4月に予定されていた韓国での公開が中止された問題作でもある。

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『人間、空間、時間、そして人間』©2018 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

 2017年8月、キム・ギドク監督は映画『メビウス』の出演を降板した女優から、撮影時の暴行やベッドシーンの強要を告発された。キム・ギドク監督は演技指導だと主張したが騒動は拡大、2018年にも女優2名から暴行やセクハラを告発されている。

 この問題は2017年にハリウッドで沸き起こった「#MeToo」運動の流れを汲んだもので、韓国映画界に激震をもたらした。今年2月、キム・ギドク監督は権利団体を相手取って損害賠償請求を起こしており、韓国ではいまだ騒動が続いている。
 
 渦中の監督の作品をあえて上映したことについて、「ゆうばり映画祭」の主催者側は「問題を提起したい」と説明していた。映画評論家で「ゆうばり映画祭」のプログラミングディレクターをつとめる塩田時敏氏に、その真意を聞いた。

映画が“お蔵入り”する理由

――映画界では、出演者の逮捕による作品の公開停止や延期が相次いでいますが、業界には明文化されたルールが存在するのでしょうか。
 
塩田氏「日本においていえば、配給会社や製作委員会の判断であり、取り決めはありません。もちろん、配給側がクレームを恐れて自粛する面もあるでしょうが、プロダクションに違約金を請求したほうが確実な商売になると踏んでいる面もあるのではないでしょうか。新井さんもピエール瀧さんも、違約金が億単位にのぼることが話題になっていますよね。
 
 ただ、制作側には公開中止を望んでいる者は誰ひとりとしていません。不祥事があればすぐ作品の公開中止や延期という対応を取ることが慣例化していますが、映画に関わった人間の犯罪がなぜ作品そのものの自粛につながるのか、その理論については誰も表立って説明できないのではないでしょうか」

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