ピエール瀧や新井浩文…出演者逮捕で映画が“お蔵入り”する理由って本当は何なの? 「ゆうばり映画祭」が真正面から向き合う

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――『ゆうばり映画祭』では、どのような経緯でキム・ギドク監督の『人間、空間、時間、そして人間』を上映作品に選定したのでしょうか。 

塩田氏「それは単純に、作品自体が素晴らしかったから、のひと言に尽きます。日本でも当初、ある配給会社が同作の契約交渉を進めていたのですが、監督の問題が浮上して日本公開も厳しくなり、契約には至りませんでした。映画祭としては、それならば直接韓国へ行って話をつけてこようと思っていた矢先に、二の足を踏んでいた配給会社が契約を結んだので、スムースに上映に至りました。
 
 私としては、優れた映画作品を過剰な自粛で公開中止に追い込むことは避けるべきだと考えています。現在の映画業界の風潮に問題提起をする意味もありました。一つひとつの作品では、配給会社やスポンサーの意向があって実現は難しいですが、映画祭は道を切り開くこともひとつの役割だと思います」
 
――批判も予想していたと思うのですが、世間からはどのような反応がありましたか。 

塩田氏「それなりの批判は覚悟していたのですが、日本国内からのクレームは想定していたよりも少なかったです。しかし、韓国の団体から上映の差し止め要請をいただき、キム・ギドク監督の問題の重大さを後から実感したようなかたちです。
 
 ただ、やはり優れた映画作品が日の目を見ずに埋もれてしまうのは、制作側としてはとても悔しいことなのです。監督の問題には関係なく、作品を観たいと思っている方も多いでしょう。韓国で認められないならせめて日本でという意義もあり、団体の方には映画祭としての立場をお伝えしたうえで上映に踏み切りました。
 
 映画祭には、わざわざ韓国から足を運んでくれたお客様もいらっしゃいました。同作は映画祭創設以来の盛況ぶりで、前売りは完売。お客さんが入りきらずに会場をひとつ増やして対応しました。“お蔵入り”してしまった作品を待ち望んでいるファンの方も多いことを実感しています」

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大盛況のうちに終わった「ゆうばり映画祭」のクロージング©2019 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭

――日本でも、新井浩文やピエール瀧の逮捕によって、映画作品の“お蔵入り”が相次いでいますが、ネット上では「作品に罪はない」といった反発の声も大きく、議論が起こっています。今後、映画業界はどのような対応をしていくべきでしょうか。
 
塩田氏「個人が犯した罪はしっかりと裁かれるべきですし、被害者をないがしろにするつもりはありません。しかし、関係者の罪と作品そのものは、切り離して考えるべきではないかと思います。作品の上映を取りやめてお茶を濁すという現状のやり方は、ただ臭いものにフタをしているだけです。
 
 不祥事に遭っても公開を決断する作品がひとつ出てくれば、ほかの作品も続くでしょう。もちろん批判も受けると思いますが、現状のようにクレームを恐れて右倣えで公開を中止するより、よほど議論が進むはずです。これは、映画界がもう少し真剣に向き合うべき問題だと思います。業界にとっては、作品こそが自分たちの財産なのですから」

 映像作品の“お蔵入り”問題は、視聴者だけでなく映画業界でも賛否両論があるようだ。作品や俳優の社会的影響力を考えればその罪を軽んじることはできない。一方で、過度な自粛による影響も大きく、全てに「中止、回収」という措置をとればいいような問題でもない。ここ最近の流れはいささか拙速過ぎると言える。

 罪の重さや被害者の有無などは事件により様々で、一律のルール作りは難しいだろう。その都度、協議していく以外に方法はないかもしれないが、議論を拒み思考停止してはならないはずだ。

(今いくわ)

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