社会

なぜ虐待ハイリスク家庭でも児童相談所は子供を親元へ帰さざるを得ないのか

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「Getty Images」より

 今年1月、千葉県野田市で、父親から虐待を受け小学4年生の栗原心愛さんが死亡した。この事件では、児童相談所(児相)が心愛さんを一時保護した後、家族の元へ帰したことが問題視され、マスコミでも大きく報道された。

 昨年起こった目黒区の児童虐待死事件でも、香川県の児相が児童を一時保護したものの、親元へ帰したことが問題となったが、なぜ児童相談所は、ハイリスク家庭であっても保護した子供を家に帰してしまうのだろうか。

 東京都児童相談所に児童心理司として19年勤務した経験を持つ心理カウンセラーの山脇由貴子氏に話を伺った。

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山脇由貴子・心理カウンセラー
横浜市立大学心理学専攻卒業後、東京都に心理職として入都。都内児童相談所に心理の専門家として19年間勤務し、現在は自身のオフィスで「女性の生き方」について相談を受け付けている。 児童虐待についても積極的にメディアで発言しており、数々のテレビ番組への出演経験を持っている。

ハイリスク家庭であっても親元へ帰してしまう理由

――今年の2月はメディアでの虐待報道がとても多い印象でした。佐賀、鹿児島、兵庫、兵庫、兵庫、横浜、兵庫、奈良、大分、10件くらいはあったと思います。さらに3月には全身にやけどを負った長女をラップでぐるぐる巻きにして放置したとして、母親と交際相手が逮捕。母親が息子を暴行する動画が拡散し逮捕されるなどの事件も、大きく報道されています。

山脇 こうした事件がマスコミで報道されることによって、通告しなければという世間の意識も高まっていて、児童相談所への通告件数も増えているようです。

千葉県野田市の栗原心愛さんの事件を受けて、警察もしっかり取り締まろうという意識になっていると思います。マスコミも「小さな虐待でも報道すべき」という姿勢になっているようにみえますね。

また、あまり大きくは報道されませんでしたが、山口県で生後2カ月の赤ちゃんが母親の虐待によって亡くなるという事件もありました。この事件の場合、母親は妊娠中からDV被害者などを受け入れるシェルターに入居していて、出産前から「子供に愛情が持てない」という主旨の発言をしていたんです。そのため、子供が生まれた直後に児相が一時保護していたんですけど、結局2カ月で親元へ戻してしまったんです。

――戻してしまい、赤ちゃんは殺されてしまった。

山脇 この事件では児相は母親と2回しか面会しておらず、シェルター職員からの要請で子供を保護していました。母親が育てる意思を見せたため戻して良いというシェルター職員の要請で、保護を解除。子供が戻って2日目くらいで母親は「しんどい」と言っていたそうですが再度の保護には至らず、悲しい結果になっています。

――栗原心愛さんの事件も、昨年東京都目黒区で起こった事件も、児相はハイリスク家庭という認識があったにも関わらず、親元へ子供を帰してしまいました。親側の虐待因子が改善されたという確証が持てない段階でも、帰さざるを得ない理由は何なのでしょうか。

山脇 今回の千葉の事件は親が虐待だと認めておらず、当然ながら帰してはいけないはずでした。原則的に、親が虐待を認め「もう絶対にしない」という約束をして、定期的に虐待がチェックできる見守り体制を作る。そのうえで、子供が親に会って「帰りたい」と言わない限り、帰してはいけないと私は考えています。

しかし、“親の攻撃が強すぎる”場合、児相はその攻撃に耐え切れないことが多いのも事実です。

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