虐待をしてしまう親の「更生」には何が必要か 現状プログラムの改善点と社会の目

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「Getty Images」より

 今年1月、千葉県野田市で父親から虐待を受け小学4年生の栗原心愛さんが死亡した事件が大きく報道され、児童虐待問題への関心が高まりつつある。3月には全身にやけどを負った長女をラップでぐるぐる巻きにして放置したとして、母親と交際相手が逮捕。母親が息子を暴行する動画が拡散し逮捕された。いずれの事件も、メディアは大きく報じている。

 前回の記事に引き続き、東京都児童相談所に児童心理司として19年勤務した経験を持つ心理カウンセラーの山脇由貴子氏に話を伺った。

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虐待をしてしまう親の「更生」には何が必要か 現状プログラムの改善点と社会の目の画像2 ウェジー 2019.03.19

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虐待をしてしまう親の「更生」には何が必要か 現状プログラムの改善点と社会の目の画像2 ウェジー 2019.03.21
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山脇由貴子・心理カウンセラー
横浜市立大学心理学専攻卒業後、東京都に心理職として入都。都内児童相談所に心理の専門家として19年間勤務し、現在は自身のオフィスで「女性の生き方」について相談を受け付けている。 児童虐待についても積極的にメディアで発言しており、数々のテレビ番組への出演経験を持っている。

一時保護を解除してよいケースと解除してはいけないケース

――山脇先生は過去、東京都児童相談所に勤めている時に、「一時保護を解除しても大丈夫だ」と判断した家庭はありましたか。

山脇 ありましたね。それで再発しなかったケースも沢山ありますし、親から「あの時、一時的に保護してもらってよかった」と言われたこともあります。

――それはどういったケースなのでしょうか。

山脇 親が自分もやられてきたので“しつけ”だと思ってやってしまったというケースが多くありました。どうしてもカーッとなって手が出ちゃうお母さんは結構いるのです。でも「それ絶対にだめなことで、あなたがそのやり方で“しつけ”を続ける限り、子供は帰せない」と根気強く伝えます。これで「何が何でも努力します」と良い方向に向かう方もいます。

「保護してもらったことで冷静になれてよかった」となり、その後再発しない家庭も沢山ありました。

――そういう家庭に共通している点は何でしょう? 山脇先生が、この家庭なら一時保護を解除しても大丈夫だろうと判断する基準は何だったのですか。

山脇 まず、「子供の話と親の話が一致する」ことが大きいです。子供の証言とお父さん・お母さんの証言が一致していて、かつ子供が「帰りたいか、帰りたくないか」という自己主張をできる。そのうえで「帰りたい」と言って、親子を会わせても問題がなく、今後も児童相談所(児相)に通ってくれて、連絡も取れそうだというケースです。だから指導に反発する家庭には、まず帰せません。

電話をしても出ないとか、約束の日に面談に来ない場合、帰すという判断はしませんでした。そこが虐待を認める・認めないの大きなポイントにもなります。

児相は、その親が虐待を止める努力をできるのかということを、親との面接を重ねて評価していくしかないですよね。

もちろん失敗もあります。児童福祉司は子供を見守り続けて評価を重ねるしかありません。 

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